予兆の天使〜小さいおじさんシリーズ11
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し彼女は『いえ、燃やします』『規則ですので燃やします』『とりあえず、燃やします』の一点張り…」
お役所仕事かよ。
「但し、ゆっくりと向かいます。私が到着する前に、家財を家から避難させておいて下さい。彼女はそう、助言してくれたとか。当時の私はあの金持ちのおっさん今度は何を始めたんだか、貯金溜まり過ぎて頭沸いたのか。としか思いませんでしたが確かにその日の正午過ぎに、火災は起き、麋竺の邸宅は全焼いたしました」
―――こいつ、そんな事思ってたのか。本当にこいつは。
「…つまり麋竺は天に罰されたのか?」
端正が小声で呟いた。どうも端正はこの件については余り詳しくないらしい。
「いや、罰ではなくランダムに選ばれるらしいんですよ。事実、彼は金離れのいい富豪のおっさんですが、悪い事をして儲けたわけではありません」
白頭巾は更に声をひそめる。
「もはや天災。故に、その裁定には容赦がないのです。罰であれば交渉の余地もあろうというものだが…麋竺もその発生を遅れさせるのが精一杯でした」
はははなるほど、なるほど。つまりこの少女が足を止めた家は。ははははなるほどなるほ
「…ってやばいじゃん!!!」
うわ、もうふざけんなよとんだ事故物件だよ!でも下手に騒いだら足を止められてしまうかも…そうすると火の手が上がるのはこの四畳半だ…。俺は彼ら3人の背後に回り込み、一緒に念力を送った。
「とっ…通り過ぎろ……通り過ぎろ!!」
彼女の歩みはとても遅い。というより歩みが遅く感じる。ここで止まったら火事、止まったら火事……
その時、彼女の歩みがぴたり……と止まった。
「ぎぃ……!!」
「と…止ま…!?」
血走った眼で美少女を凝視する、俺を含めて4人のおっさん達。美少女は畳をしげしげと見つめると薄く笑った。
「もう駄目だ…火だ、火が…」
端正が異様に取り乱し始めた。
「……お前火計大好きじゃん…」
つい、口をついて出てしまった。端正が思わずムカついた顔で俺を見上げてしまっている。…おいおい、俺は居ないんじゃなかったのか。
「火計を多く用いる者はその恐ろしさを嫌というほど思い知っているのですよ」
珍しく白頭巾が、取り成すようなことを云う。羽扇に隠れてその表情が見えないが、肩が僅かに震えていた。…そういや、こいつも火計大好きだったな…。
「いや待て、まだ動くぞ?」
一番冷静だった豪勢が、低く小さい声をあげた。足を止めていた美少女が、ふたたび緩慢にだが歩み始めていた。俺の横を通り過ぎる時に、抱えているものがちらっと見えた。
それは妙に青い火だった。
「―――よっしゃスルーだ!!」
「セーフッ!!セフセフッ!!」
美少女が壁に吸い込まれるように消えた瞬間、豪勢と端正がガッツポーズで急激に盛り上がり
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