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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第十九話 沖ノ島攻略作戦その1
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ノース・ステイトとの通信回復作戦の第一歩である沖ノ島攻略作戦は、最先鋒として海域に突入した矢矧率いる第一水雷戦隊と敵先遣隊との交戦で幕を開けた。
 航空兵力の十分な支援の下、第一水雷戦隊は敵の1個艦隊を撃破し、続く敵の第二陣を撃滅しにかかっていた。

 その戦法はいたって単純である。

まず、航空兵力が雷撃、爆撃を敢行して敵艦隊を混乱に陥れ、そこを水雷戦隊が得意の近接戦闘及び雷撃戦で仕留めるというものだ。矢矧たちの頭上には入れ代わり立ち代わり常に数十機の航空機が飛び交い、万全な守りを敷いていた。並の空母部隊では制空権を奪還することは不可能であった。
「よし!3隻目、撃沈!!次は?」
砲煙消え去らぬ中、矢矧が味方を振り向いて尋ねた。
「矢矧先輩、前方2時方向に新たな敵艦隊が出現!軽巡を中心とする巡洋艦隊です。」
陽炎が叫んだ。
「想定通りね。」
矢矧は落ち着いていた。
「私たちが敵の制海権下の海域に到達して、敵艦隊と接触したことで、敵がこちらに近づきつつあるわ。」
矢矧は左腕を振りぬいた。
「全艦隊、いったん後退。距離を保ちつつ応戦し、敵を所定の場所まで引き付けるわよ。」
『はい!』
第一水雷戦隊は後退した。だが、最後尾の磯風が矢矧を呼び止めた。
「駄目だ。敵艦隊の行足が鈍い。ついてきていない。」
矢矧が振り返ると、敵艦隊は一定の距離をおいて追尾してきているが、その速力は鈍い。こちらの様子をうかがっているようだ。
「こちらの戦力に恐れをなしたのか、あるいは何かの罠だと疑ってかかっているのか・・・・。」
「矢矧〜。どうするの?」
と、酒匂。
「仕方ない。全艦隊反転。もう一度敵の鼻っ先に砲撃して誘い込むわよ!」
矢矧の号令一下、全艦隊は反転して敵艦隊との距離を詰めた。ところが敵艦隊は一斉に反転し、全速力で白波を蹴立て始め、距離を開け始めた。
「私たちを・・・・誘っている?!」
矢矧は眉を上げた。
「ど、どうするの?こんなこと予定にはなかったよ?」
舞風がうろたえた。当初の作戦では第一水雷戦隊は敵艦隊を指定ポイントまで誘い出して、そこで到着した重巡戦隊と航空隊とで殲滅し、さらなる敵艦隊を誘い込む呼び水となるはずだった。それが敵に看破されたのか。あるいはこちらの動きをまだ疑っている段階なのか。

矢矧は瞬時に決断していた。

「仕方ないわ。私たちの役割はあくまで陽動。その陽動作戦が上手く成立しないと、本隊に敵が殺到するもの。ここは危険を承知で敵の懐に斬りこむしかないわ。黒潮!」
「はいぃ!」
「あなたはここに残って、重巡戦隊と連絡を取って。どのみち応援は必要よ。それがすんだら司令部にもこのことを伝えて。そして重巡戦隊が到着次第合流してあとは指示に従うこと。」
「せ、せやけどそれやと矢矧先輩が――。」

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