第十九話 沖ノ島攻略作戦その1
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私たちはここで敵を引き付け続けることしかできないのよ。後は本隊が頑張ってくれることを祈るだけ、ね。」
もっとも、と高雄は続く言葉を自分の胸の中に広げた。
(もっとも、敵の戦力が私たちをはるかに凌駕していたのなら、もうどうしようもないけれど・・・・。)
高雄はそこで何か引っかかるものを覚えた。
「凌駕・・・?どうしてそんな言葉が出てくるの?そんなことはありえない。」
そこまできて高雄はさらなる疑問を覚えた。
「そんなはずはないと私たちは思っていた。でも、そもそもそれは何故?それは・・・・?」
「それは・・・・?」
沖ノ島に向けて全速力で走りながら陸奥も同じことを考えていた。秘書官として運営に多忙な長門に代わり沖ノ島海域攻略の下準備を積み上げてきた事実上の総責任者が彼女だった。
沖ノ島海域については偵察を出さなかったどころか、南西諸島攻略作戦が行われていた以前から数度にわたり偵察をひそかに行っていたし、作戦が発動されてからは潜水艦娘も展開させて逐一敵戦力及びその分布の報告もさせていた。それによれば敵の戦力は確かにこちらより多いが、広大な海域全般に散開されていて、沖ノ島そのものにはわずか数個艦隊が駐留するだけだったはずなのだ。
それがなぜこうなったのか。偵察部隊からの報告に落ち度があったのか。いや、それはないと陸奥はすぐに切り捨てた。一度や二度の報告ならばそれもあり得る話だが、偵察は何度にもおよび、しかもその都度担当者が変わっている。落ち度などあろうはずはない。となるとおのずと思いつける答えは一つだった。
漏れていた。こちら側の計画が敵に漏れていた。
そう考えた刹那総身が震えるようだった。それはもっとはっきり別の言葉で表現すれば、日ごろ屈託なく話し、起居を共にしている仲間の中に裏切者がいるということなのだ。
だが、そんな馬鹿なことはない。それぞれ個性の強さこそあれ、深海棲艦に通じる者が艦娘にいようはずがない。第一今現在の深刻化した情勢において、一致団結して敵に当たらなくてはならないというときに、不満など湧き上がってくるはずがないではないか。その敵そのものに通じようというほどの強い不満を持つ者など・・・・。そこまで思い悩んで、一つの名前がぱっと出てきた。
(尾張・・・!)
慌てて陸奥は前後左右を見た。いない。尾張がいない。まさかと思って二度三度と確認してもいない。
「まさかとは思うけれど・・・・。」
「どうした?顔色が悪いぞ。」
並走していた長門が陸奥を見た。
「ええ・・・・いえ・・・・。」
言葉を濁しながら陸奥は決断していた。
今の情報ではまだ尾張の裏切りという結論は出せない。不確定要素を含んだ結論を皆に話せば、士気の低下、動揺というマイナスだけが作用する。そのようなことは今の状況ではもっともしては
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