相克する正義
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身御供として完成させた剣――――胸糞悪い。
怒りの感情そのままに追撃に迫り来ていた一組の陰陽剣を叩き落とす。陽剣干将と陰剣莫邪ぶつかり合って同時に砕け散る―――まるで炉に身を投げた伴侶との再会で妄執を絶たれたかのように。
“担い手は此処に独り、剣の丘で鉄を鍛つ”
大太刀を引き抜き、黒衣の男が疾走する。それを撃ち落とさんと無数の刀剣が射出される。
「っおおおおおおおおお―――――!!」
一度に命中させることの出来る剣の数なんぞたかが知れている。如何に無限の剣を用意しようがそれらを一度に全部この身に当てることなど出来はしない。
ならば、自身に命中しうる刃をだけを往なし、弾き飛ばして進むのみ―――この剣の逆風を越えなければ己が望みを果たせないのなら是非もない。
火華が咲いて刃鳴が散る。
大太刀の刀身に無数の亀裂が奔って拉げていく―――それも次の瞬間には蛍火に呑まれて次の瞬間には復元されていく。
その様子はさながら無限の剣と無尽の剣の鬩ぎ合い。
”ならばわが生涯に意味は不要ず”
あと一歩―――この距離なら届く!!
間合いに入ったという確信と共に黒衣の男が地をける。頭の高さは変わらない。
重心移動を最小限に抑えた最短距離で移動を行いシーンレスで斬撃を発動させる剣道のすり足の発展だ。
肩に担いだ格好から繰り出される縦一文字の斬撃―――早い、投影が間に合わない。その斬撃の重さは甲冑ごと敵を割るのが目に見える。
だが、そう来ると分かっているのなら避けられる。
身を捻った衛宮士郎の紙一重横を太刀が素通りする――――その刹那、黒衣の男の顔が歪んだ。
「―――なっ!?」
すかぶったハズの刀身がまるで燕が翻るように舞い、自身の顔面へと迫っていた。
厳流、虎斬りと言われるその技―――それこそ、かの剣豪、佐々木小次郎が実現した燕返しの雛形となる技である。
がきん!と鋼が何かに克ち合う音がした。
「―――何っ!」
必殺の斬撃、衛宮士郎の首から袈裟切りにする筈だった、しかしその斬撃は無数の剣で止められた―――衛宮士郎の体から皮膚を、肉を貫いて生える無数の剣に。
“この体はきっと、無限の剣出来ていた――――”
世界が炎上する、世界が燃やされて別の世界へと塗り替えられる。
塗り替えられた世界は―――無数の剣が乱立する世界、さながら黄昏に燃える墓標の荒野だった。
「まさか、この禁じ手を使わなければならないとはな………だが、使わねばならぬと確信していた。」
「正気か、固有結界を暴走させて体を剣に変換するなど……」
「貴様相手では捨て身の一つや二つせねば命取りとなる。」
鱗のように生えた剣が消失し、血を吹き出す傷口へと変わる。
「そ
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