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第四十六話その2 沸点の限界です。
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タイン中将はフレーゲル男爵に尋ねたことがある。「なぜ閣下はミューゼルをそこまで執拗に狙われるのですか?」と。これに対するフレーゲルの答えは、沈黙だった。表面は鉛のような無表情だったが、ベルンシュタイン中将がかすかに驚いたことに、そこには何かしらの「恐怖」の色合いが混じっていたのである。抜き差しならぬ因果があるに違いないとベルンシュタイン中将は思っている。

「しかしながら、その短剣が味方の列から飛べば、どうなりますかな?」

 ベルンシュタイン中将の発言に、一同がおやっと言う顔をする。

「つまりは、あの孺子の味方を抱き込むのか?」
「そんな無粋な真似はしません。そんなことをすれば即時相手から警戒をされるだけの事。私が言うのは、艦隊再編や部隊移動により、新しい参謀や参謀長などが彼の下に就くことはあるでしょうという事なのです」
「なるほど・・・・」

 フレーゲル男爵がシュライヤー少将を見る。

「やってみましょう。小官の盟友に人事局の人間がおります。彼に頼めば(むろん暗殺についてなどは一切知らせませんが。)暗殺者をリストに滑り込ませてくれるやもしれません」
「よかろう。ではベルンシュタイン。その方面で誰か有能な者を探してみよ」

 卿の発案だからな、とフレーゲルは冷笑を浮かべていた。自身の策を否定された腹いせに、今度はベルンシュタイン中将の策を否定してみたい、失敗に終わってほしいと言わんばかりの顔である。ベルンシュタイン中将はそれを感じ取ってもしいて顔には出さず、ただ無表情に頭を下げて承諾の意志を示した。


 邸宅を出たベルンシュタイン中将は無表情のまま路地裏から大通りの人の往来に紛れた。地上車を使わなかったのは、今回の密談が極秘裏の物であったことは言うまでもないのだが、ベルンシュタイン中将自身少し歩きながら考えをまとめたいという思いもあった。
 彼はしばらく行くと、右手にカフェが出ているのに気が付き、店内に入り、カフェオレとブリオーシュを注文すると、トレイを抱えて店先のテラス席に座った。

「・・・・・・・」

 カフェオレを一口飲み、ブリオーシュを手でほぐしながら、彼の眼は通りの人だかりを見つめていた。

 この世界に転生したと知った瞬間、最初は何かの夢ではないかと思った。それが夢ではないと分かった時、彼は何かしら安堵の思いでいた。前世では彼は40代のそこそこの規模を持つ会社の社長であったが、世界恐慌の影響で事業が急速に悪化、借入金が膨らみ続け、銀行からの融資もストップ、さらに膨れ上がった借金のカタに工場と土地、自宅を売却される寸前にまで来ていたのである。
 もう助からないと思った。従業員と家族を救うすべはただ一つ、自分に掛けていた生命保険金が無事に降ろされることである。だが免責事項によって自殺には保
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