第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#4
DEPERTURES 〜旅立ち〜
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こまで誰かを 「憎い」 と想ったのは、
生まれて初めてだった。
「DI……O……」
呟くように、少女はソノ男の名を口にする。
脳裡に浮かぶソノ男は、こちらを嘲るように見つめている。
まるで自分が傷つけば傷つくほど、ソレはたまらない愉悦だとでもいう様に。
「DIO……DIO……DIO……ッ!」
少女は、口に出す。
最も忌むべき 『宿敵』 の名を。
全身全霊を以て討滅すべき相手を。
己が存在に刻み付けるかのように。
「DIODIODIODIODIODIODIODIODIODIODIODIODIO
DIODIODIODIODIODIODIODIODIODIODIODIODIO
DIODIODIODIODIODIODIODIODIODIODIODIODIO
DIOオオオオオオオオォォォォォ―――――――――!!!!!」
灼熱の、咆吼。
コレは、誓い。
少女が自分の存在に、堕天の焼印の如く捺しつけた、灼刻の誓約。
もうソレ以上、涙は流れなかった。
少女の新たなる深紅の決意が。
淑女に約束した鮮血の如き誓いが。
少女の胸の裡を取り巻く哀しみをスベテ吹き飛ばした。
新たなる、フレイムヘイズの誕生。
己が存在の裡に、灼熱の使命感と黄金の精神の輝きとを同時に宿した。
熾烈なるその真名は。
『紅 の 魔 術 師』
【3】
その夜、少女は一睡もしなかった。
己が決意を噛み締めながら夜を明かした。
カーテンの隙間から差し込む陽光。
ソレが己の存在を暗闇に映し初めた時。
少女はおもむろに立ち上がり、机の上におかれた “コキュートス” を首にかけた。
「行こう」
「うむ」
短く己の契約者と言葉を交わし、少女は自室の扉を開く。
バサッと飛鳥の羽撃きのように、紅世の黒衣 “夜笠” が翻る。
その右肩口に刻まれた、灼熱の高十字架を
魅せつけるかのように。
悲哀と絶望に囚われていた少女は、もういない。
その風貌は、この世の何よりも透き通っていた。
自分が今すべきコトは泣くコトじゃない。
戦うコト。
ソレが自分がアノ人の為に出来る、唯一つの事だから。
凛とした表情のまま、威風堂々と力強く檜の床を踏み締める
少女の眼前に、見慣れた貌が姿を現す。
「……」
「……」
互いに無言のまま、真正面から対峙する。
無頼の貴公子と紅蓮の美少女。
昨日は、あれから一体いつまで雨の中にいたのだろうか?
一時間、二時間、ひょっとして、一晩中?
問い質そうと想って、少女は止めた。
言葉はなかったが、感じているコトは同じだと想えたから。
己の裡で誓った、確かな決意
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