第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#4
DEPERTURES 〜旅立ち〜
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まるで悪戯好きの子供のように、
淑女は無邪気で嬉しそうな笑顔をいっぱいに浮かべる。
「さ、て、と。気分も良くなったし、シャナちゃん。今晩は何が食べ」
そう言いながら淑女が身を起こそうとした刹那。
「動くんじゃあねぇッッ!! 静かにしてろォォォ!!」
「動いちゃダメッッ!! じっとしててッッ!!」
突如空間を劈く、二つの声。
承太郎とシャナ、その怒号と叫びに淑女はビクッとその肩を震わせる。
「……」
ジョセフはその二人を無言で見つめる。
両者の叫びがあと数瞬遅ければ、自分が叫んでいたのかもしれない。
その祖父の視線には気づかず承太郎は、
「ね……熱が下がるまでは何もするなってコトだ……
またブッ倒られたらかなわねーからな……」
平静を装いながら学帽の鍔で目元を覆う。
「家事は皆で分担してやるから、ホリィは大人しく寝てて。ね?」
捲れた羽毛布団を元に戻しながら、シャナも沈痛な瞳でそう告げる。
「フフフ、そうね。コレ以上皆に迷惑かけられないしね。
それに、病気になると、皆、いつもより、優しいわ。
こんなに、温かいなら、たま、には、風、邪、も、いい、かも、ね……」
淑女はそう言って、静かに双眸を閉じる。
(!!)
そのコトに敏感に反応したジョセフが、即座に彼女の異変に気づく。
「ホ、ホリィ!? また気をッ!」
「ウ、ウソでしょッ!? だって、今まで元気にしてた!!」
淑女の傍でジョセフとシャナが驚愕の声をあげ、
父親は愛娘の額に手を当てる。
「く……ううう……き……気丈に明るく振る舞っていたが、何という高熱……!
今の態度で解った……何も語らなかったが娘は、
自分の背中の 『スタンド』 に気づいている……
逆にワシらに自分の 『スタンド』 のコトを隠そうとしていた……
ワシらに心配かけまいとしていた! この子は……そういう子だ……!」
灼きつくように熱い娘の額に手を当てながら、
ジョセフはその身を震わせる。
「コレも……無理して食べてたの……? 私が心配しないように……」
ジョセフと同様に少女もその細い輪郭を震わせながら、
潤んだ瞳で自分の剥いたリンゴに視線を向ける。
「……」
そうだ。
自分の母親は、 『そういう女』 だ。
いつのまにか傍に来ていた無頼の貴公子は、
何もしてやれない自分に歯噛みするまま
悪夢の淵へと堕ちていった母をみつめるのみ。
「必ず……助けてやる……安心するんだ。
心配する事は何もない……必ず元気にしてやる……
だから、安心していればいいんだよ」
目の前の残酷な現実に屈しないように、
強い決意を持って言葉を紡ぐジョセフ。
その彼ををみつめる、『人間ではないモノ』 の視線が在った。
『……』
淑女の寝室に
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