六話:肝試し
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振り返りぐだ男の方を見るが彼は固まっていた。
そして自分の背後を呆然とした表情で見つめている。
「な、なによ。こんな時に悪ふざけなんて―――」
そう言って振り返り彼女は絶句する。
それは恐怖ではない。ただ、単純に脳が処理できなかったのだ。
暗闇に浮かび上がる目の前の―――マッスルを。
「―――アイドルに興味ありませんか?」
まるで岩のような筋肉を包むスーツ。
折り目正しく反逆されたシャツにネクタイ。
そして、手錠による拘束を受けながらも丁寧に差し出された名刺。
「インペリアルローマ事務所で社畜剣闘士を務めているスパルタクス、人呼んでスパPだ」
座右の銘『いつでも笑顔』を忠実に守る満面の笑み。
だというのにその男はどこからどう見ても―――マッスルであった。
「『ああああああッ!!』」
「アッセイッ!」
ジャンヌ・オルタが衝動的にスパルタクスをボコボコにする。
ぐだ男が素早く鍵を開けて逃走の経路を確保する。
そして二人揃って脇目も振らずに逃げ出す。
二人にとってはそれだけの衝撃だったのだ。
「はぁ…はぁ…なによ、あいつ……反逆大好きな人相してるのにアイドルってなに?」
『ジャンヌ・オルタの反抗的な態度が反逆ととられたんじゃ?』
「あんなのと一緒にしないでくれる!?」
息を切らして廊下に座り込む二人。
しばらくそのままの状態で英気を養う。
「それで後はどうなるの?」
『後は保健室。それが終われば体育館でゴール』
「あと少し……次は何が来るのかしら」
気づけば保健室の近くに来ていたのでそのまま歩いて向かう二人。
そして慎重に中の様子を確認し、誰もいないことを確認し入る。
「……何もないわね」
『外にも誰もいない』
「それならそれでいいわ。これで最後のスタンプ…と」
最後のスタンプをしっかりと押すジャンヌ・オルタ。
その瞬間、まるでスイッチが入れられたかのような機械音が響いてくる。
反射的に音のする方向を見る二人。
「ベッドからなんか出てきてるわよ……」
『人? いや、あれは人形?』
ベッドの中から這い出てきたのはオートマータ。
機械仕掛けの存在だと分かっているのでジャンヌ・オルタは特に恐れない。
「ハッ、今更人形が一体出てきた程度じゃ驚かないわ」
『……ジャンヌ・オルタ、外見て』
「はあ? 何を言って……」
外を見て言葉を失うジャンヌ・オルタ。
目に映ったのは遠くから行進してくるヘルター・スケルターだった。
それだけなら驚かない。真に驚いたのは、その数だ。
「なんで…廊下が埋まる数がいるのよ……」
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