六話:肝試し
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「正解だ。ところで先に行かないのか? 俺の役目はもうすんだ。お前達を止める理由はない」
先程の緊張感はどこにいったのか、相手が分かった途端に気が抜けるぐだ男。
『どうしてまたお化け役なんかしているんですか?』
「頼まれたからな。俺の見た目はメイクがしやすいとな」
相も変らぬ無表情で淡々と答えるカルナ。
三年生の彼は校内でも見た目から良く怖がられているが本当は優しく、頼まれごとは断らない。
人はそんな彼を施しの英雄と呼んでいる。
『分かりました。それじゃあ、行こうかジャンヌ・オルタ』
「そ、そうね。全く驚かせるんじゃないわよ……」
「これは相手を驚かせる趣旨の催しではないのか?」
「そういうことを言ってるんじゃないわよ!」
どこか噛み合っていない会話を繰り広げた後に二人並んで廊下に出る。
そんな二人にカルナが最後に忠告を行う。
「廊下を通る場合は急いで進むべきだろう。あれは俺と違って容赦がないからな」
『あれ?』
「後ろを見てみろ」
言葉通りに振り返る二人。
廊下の向かい側からこちらの方へ駆けてくるものがいる。
白い頭巾を頭から被ったような見た目にギョロリとした瞳。
極めつけはアンバランスにつけられた二本の人間の足だ。
「ちょ、何よあの気持ち悪いやつ!?」
『メジェド。目を合わせたら呪われる。好物は人間の心臓なエジプトのゆるキャラ』
「それのどこがゆるキャラよ! どうみてもキモキャラでしょ!!」
メジェドに背を向け全力で逃げ去りながら話す二人。
しかし、メジェドは流石は神とでも言うべきか、気持ち悪い程の速さで追ってくる。
取りあえずどこかに逃げ込もうと二人して空いている教室を探す。
『ジャンヌ・オルタ、こっち!』
「あ…!」
図書室の扉が開いていることに気づきジャンヌ・オルタの手を掴み飛び込む。
そしてしっかりと鍵をかけてメジェドが過ぎ去るのを息を殺して待つ。
『……行ったみたい』
「そうね。それは良いとして…い、いつまで手を握ってんのよ」
『あ、ごめん』
慌てて手を放すが今度は顔が火照ってしょうがない。
チラリとジャンヌ・オルタの表情を見るが彼女の方も恥ずかしそうに顔を赤らめていた。
『…怒ってる?』
「べ、別に、この程度で怒ったりしないわよ……さっきは守ってくれたし」
『さっき?』
「何でもないわよ。ほら、ここ図書室だし早いとこスタンプを押しましょ」
カルナに対して自分を守るために前に出てくれたことを口にするがぐだ男には思い当たらない。
そのことに複雑な気分になりながらも今度は自分がスタンプを押しに行く。
「これでいいのよね。また、何か起こらないうちに進みましょ」
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