五話:準備
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彼を見送ることしかできない。
「クー・フーリンさん大丈夫でしょうか……」
『兄貴は死んだ! もういない!』
「まだ死んでねえよ!」
廊下の向こう側からクー・フーリンが叫び返してくるがぐだ男の耳には入らない。
ただ、兄貴の想いを背負い、胸に抱き、真っすぐに歩みを進めていくのだった。
「先輩、何事もなかったように下校しないでください」
マシュに困ったような顔でツッコまれるが結局二人して帰ることにする。
よその部活の事情に首を突っ込むのはお門違いというものだろう。
昇降口を出てマシュと共に歩いていると見知った姿が見えてくる。
『何してるの? 天草』
「おや、ぐだ男君にマシュさんですか」
何やら重たそうな段ボールを良い汗をかきながら運ぶ天草と遭遇する。
「見ての通り資材の運搬の最中ですよ」
『もう少し具体的に』
「それもそうですか。はい、これは毎年恒例の肝試しに使うセットの一部ですよ」
『ああ、あれか』
納得がいって頷くぐだ男。
そんな二人の様子にまだ一年のマシュは何のことかわからずに首を傾げる。
「あの、それは一体?」
『そっか、マシュは初めてだもんね』
「その名の通り肝試しですよ。毎年夏休み前に生徒が企画する行事です」
先輩である二人がマシュに説明していく。
マシュの方も興味津々なのかコクコクと相槌を打つ。
『設定されたポイントをスタンプラリーみたいに回りながら肝試しするんだ』
「二人一組のペアで様々な教室を回ってゴールの体育館を目指すゲームです」
『あれ、今年は墓地でやらないの?』
天草の口から出た去年との変更点に驚き尋ねるぐだ男。
すると、天草は若干渋い顔をする。
「ええ、去年私とジャンヌが除霊をし過ぎたせいか出が悪くなってしまって……」
「本物がいたんですか!? というか除霊しながら回ったんですか!?」
衝撃の告白に思わず声を張り上げるマシュ。
一方のぐだ男はそういえばそんなこともあったなと懐かしそうな顔をする。
「去年は私とジャンヌがペアになりまして。恥ずかしいことにどうした意図で行われているのか理解せずについ良かれと思いまして」
『良かれと思って除霊したの?』
「はい。仏教徒かキリスト教徒かは分かりませんが少なくとも成仏はできたはずです」
良い笑顔で微笑む天草にマシュは何と言うべきかわからないと言った表情をする。
ぐだ男の方は彼の性格は分かっているので特に驚きはしない。
『それじゃあ今年はどうするの?』
「二年生や三年生、近所の人達から有志を募って驚かす役になってもらいます。因みに私もどういった内容かは知りません」
『つまり変わった肝試しなのか』
「あの……本物が出るのは普
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