第十一話 良家の子弟の強み
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感謝した。
「…そこまで楽観視はしておりません」
「かのセバスティアン・ミューゼルのように救いの手を拒絶するだろうと、卿は言うのか」
回想から現実に戻った俺の言葉に安心から一転、落胆の表情を見せた校長と執事に、ブルーノが間髪入れず補足する。
「ただ観戦するだけならその危険もあります。ですが、眠っている先祖の血が目覚めて燃え上がれば、不安はないでしょう」
「当日は装甲擲弾兵副総監オフレッサー大将がトーナメントを観戦に来られます。決勝戦の後にオフレッサー閣下から観戦の学生で我と思うものはと挑戦者を募っていただければ、オイゲン公子も手を上げられるでしょう」
貴族らしく先祖の血、という単語に再び期待に顔を輝かせた校長──このおっさん、無邪気すぎる。絶対悪いことはできないタイプだ──は俺が計画の詳細とクナップシュタイン男爵経由でレーリンガー男爵にオフレッサー大将のトーナメントへの臨席を頼みこんだ通信文の写しと喜んで承諾する旨が大書きされたオフレッサー大将からの返書の写し、トーナメントのプログラムを見せると、満面の笑顔になって水飲み鳥のように頷き始めた。
「いいだろう。君たちの他に成績優秀者を何人か、幼年学校代表として観戦に行かせよう。これと思う者がいれば指名したまえ。できる限り希望をかなえよう」
「ではシュラー、バルトハウザー、ハーネルの三名を」
すかさず同期の三人を指名するブルーノ。事前に俺が話をつけてあることは言うまでもない。
ブルーノと同じ階級の者同士仲がいいシュラーは辺境の貴族シュラー子爵家の分家の出、祖父は近衛兵に選ばれた剣の達人で本人も剣がうまい。地上軍の大佐を父に持つバルトハウザーはホルストの喧嘩友達のような存在だ。父は戦闘機乗り──上官はグスタフ・イザーク・ケンプ少将といって、ワルキューレ運用のスペシャリストであるらしい──のホルストを入れた三人とも、戦技の成績は学年上位につけている。もちろん俺たちも同じだ。
「我々がまず名乗りを上げます。先陣はバルトハウザー」
「バルトハウザーは学年はもとより全校でも知らぬ者のない火の玉小僧、うまくすれば先陣の彼の雄叫びだけで火がつくことでしょう」
「うむ、うむ」
そして俺たちを押しのけて挑んで一発でのされて諦め悪く挑み続け、オフレッサー大将に一喝される。オイゲン公子は学校に出席し、校長はお褒めの言葉をいただく…俺たちにも分かる幸福な未来予想図を思い浮かべて頷き続ける校長はもはや事が成功したかのような顔で、もはや説明を求めようともしなかった。
「期待しているぞ、グリルパルツァー生徒、クナップシュタイン生徒」
俺たちを退出させると隠そうともせずにワインとキャビア──誰の仕業かラベルに『不良品』と書かれたシールが貼られているのが一瞬見えた──を取り出し
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