無印編
第0話 その言葉はきっと始まりで
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ソレは、憎悪と殺意でできていた。
悪であれ、そう願われた少年を通じて、奇跡の杯は破壊と死を撒き散らす邪悪へと変異した。
街を飲み込むソレを、一つのあり得ない、だがきっと尊い祈りが突き刺した。
「“この世全ての悪”・・・お前にすらも、救いがあれば良いのにな・・・。」
皮肉気な、しかし優しい声が、突然基盤をズタズタに切られ、滅茶苦茶に繋がれたソレに響いた。
そして、見るもの全ての心を震わせずにはいないであろう星の極光、最強の幻想は振り下ろされる。
「“約束された勝利の剣”!!!」
――ケケッ・・・俺に救いなんかあってたまるかよ。
ソレは、剣で出来ていた。
正義の味方になる、そう誓ったいつかの少年は、破壊と死をもって絶対的正義を執行する化け物へと変異した。
今にも消えようとするソレを、きっと与えられるべき、救いの手が差し伸べられた。
「”せいぎのみかた”・・・こんな結末が幸せだなんて、私は認めないから・・・。」
そっけなくて、優しい声が、その身を自らに貫かれたソレに響いた。
そして、見るもの全ての目を奪うであろう虹の極光、魔法の光は振り下ろされる。
「Anfang――――!!」
――今度は、人間らしい幸せ、手に入れなさいよ。
地獄を、地獄を見た。
黒い月からあふれ出した呪いによって、全てが焼き尽くされた、地獄を。
救いを求める手を振り払って歩いた。
腕に抱いた少女の命を、取り零してしまわないように。
どれだけの時間が過ぎたのだろうか。
倒れ、死を待ちながら伸ばした手は、再び受け止められた。
「生きてる・・・!生きてる・・・!!ありがとう・・・ありがとう・・・!」
そう言って涙を流す男の表情は、まるで救われたのは俺じゃなくて、彼自身かのようだった。
彼の隣に立って涙を流す白い女性と、駆け寄ってくるいくつかの足音、そこで俺は意識を手放した。
何時かのあの日と同じ、その言葉は告げられる。
何時かのあの日には居なかった女性の傍らで。
「初めに言っておくとね、僕達は魔法使いなんだ。」
だからきっと、二人を引き取った夫婦に告げられた、彼らの言葉は
「爺さん、俺・・・『せいぎのみかた』だったんだ・・・。」
「母様、私・・・『この世全ての悪』だったんです・・・。」
二人に、家族以外の全てを捨てる事すら受け入れさせたのだろう。
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