98部分:第九十七話
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第九十七話
第九十七話 煮てみて
カレー作りはとりあえずは順調にいっているように見えた。今は野菜も鶏肉も入れて林檎や牛乳も入った。ルーも入れられておりとりあえずは安心なように見えた。
「順調じゃない」
「そうだよね」
ピエールとジュリエッタはそれを見て囁き合う。
「これなら大丈夫だよね」
「うん」
「さっきも言ったけれどわからないわよ」
けれどそれでも梨花は油断大敵と言っていた。
「問題はこれからなんだから」
「何か今日の御主人様って用心深いよね」
「そうだね。何でだろ」
「料理はね、作るだけじゃないのよ」
梨花は使い魔達にそう答えた。
「最後の最後まで料理なんだから」
「最後の最後までねえ」
「そうよ、作って食べてそれで終わりじゃないの」
そして言う。
「わかったかしら」
「わかる?」
「いいや、ちょっと」
しかし使い魔達はそう言われてもまだわからなかった。
「食べたら終わりじゃないかな」
「そうだよね」
「貴方達はまだ料理ってのがわかっていないわね」
梨花はそれを聞いてくすりと笑った。
「そんなのじゃいいシェフにはなれないわよ」
「私達使い魔だし」
「ヘビやトカゲがシェフになってもねえ」
「まあ見ていなさいよ」
梨花はそんな二匹に対してまた言った。
「山場はまだあるから」
「山場って言ったって」
ピエールがそれに反論する。
「もうすぐカレーできちゃうよ」
「結局何も起こりそうにないわよ」
ジュリエッタもであった。見れば利奈はつつがなく料理をしていた。丁度御飯を炊けた。
「今できたし」
「それでもまだあるの?」
「だから見ていなさいって」
彼女はまた言った。
「これからなんだから」
「これからこれからって」
「何も起こりそうにないじゃない」
そんな話をしているうちに利奈はお皿の上に御飯とルーを盛っていく。そして梨花のところにもカレーを運んで来た。
「どうぞ、お姉ちゃん」
「有り難う」
そこに運ばれて来たのは見事なチキンカレーであった。美味しそうな香りと湯気が漂っている。
「どうぞ召し上がれ」
「うん」
こうして二人はいただきますの挨拶の後で食べはじめた。それを見て二匹の使い魔達は囁いていた。
「これでもまだ心配っていうのかな」
「さてね」
それは梨花にだけわかっていることであった。そう、料理はまだ終わっていないのだから。
第九十七話 完
2006・3・13
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