第十九話 療養所その十
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「いいね」
「わかりました、本当に」
真剣な顔でだ、優花は岡島の言葉に頷いた。
「それじゃあ女の子になっても」
「そうしてね、忘れる位がいいよ」
優花自身がというのだ。
「そこまでないことに出来たらね」
「僕が僕の過去を忘れる」
「完全にね、どうでもいいって思えて」
「どうでもですか」
「そう、人はどうでもいいことはすぐに忘れるよ」
記憶に留めておく意味を見出さないと合理的に判断してだ、このことは人間の頭脳に備わっている機能の一つである。
「だからね」
「僕がどうでもいいと思えたら」
「忘れるよ、もっとこのことはね」
「忘れられないですよね」
「絶対にえ、けれどね」
「そこまで隠せたら」
「いいよ」
優花に優しい声で話した。
「そう出来たらね」
「周りにも悟られないですか」
「そうだよ、いいね」
「わかりました、そうさせてもらいます」
「それならね、じゃあ今からね」
「はい、ここで過ごさせてもらいます」
「楽しんでね、ゆっくりと」
まさに療養する様にとだ、岡島は優花に優しい声で話した。そしてだった。
優花は療養所での生活をはじめた、神戸にいた時と同じ時間に起きて掃除をして食事の後は絵を描いたり散歩をしたり読書をしてだった。
昼食や夕食、それに入浴も楽しみ決まった時間に寝る。そうした生活を送る様になって数日経った頃にだ。
岡島は優花の部屋に来た時に彼に尋ねた。
「ここの生活はどうかな」
「静かですね」
岡島の問いにだ、優花はまずこう答えた。
「とても」
「そう、静かなんだね」
「はい、これまでなかった位に」
「そうなるのも当然だね」
「療養所だからですね」
「しかも外れにあるからね」
その療養所にというのだ。
「だからね」
「それで、ですよね」
「静かなのも当然だよ」
まさにとだ、岡島は優花に答えた。
「それもね」
「そうなんですね」
「静かに過ごすべき場所だしね」
「このことが当然ですね」
「この静かな中で気持ちを落ち着けて」
そのうえでというのだ。
「過ごしてね」
「わかりました、それじゃあ」
「じっくりとね、それとね」
「それと?」
「静かな中でリラックスもしてね」
「楽しんで、ですか」
「だから僕達も絵を描いてもらったり本を読んでもらったりしているんだ」
そうした優花の好きなことをしてもらっているというのだ。
「いつもね」
「リラックスする為にですね」
「そうだよ、気持ちが沈んでいると」
落ち着いてもというのだ、例え。
「それだけで駄目だからね」
「だからリラックスすることもですね」
「大事だよ」
「そうなんですね」
「そう、それとね」
岡島は優花にさらに話した。
「部屋にはテレビもあ
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