巻ノ五十二 島津四兄弟その五
[8]前話 [2]次話
「噂通りの方々ですな」
「我等がですか」
「そう言われますか」
「左様、天下の豪傑」
十一人共というのだ。
「その相がお顔にも出ていますな」
「確かに。気が違いまする」
歳久も言う。
「武勇はまさに水滸伝の好漢の如し」
「ははは、味方であって欲しいですな」
家久は笑ってこう言った。
「是非」
「今は敵でないにしても」
ここでだ、義久は言った。
「すぐに敵同士になるのが残念ですな」
「そのことですが」
幸村は飲みつつだ、義久に話した。
「関白様は降られ」
「薩摩、大隅、日向の三国でですな」
「満足されればよしと言われています」
「左様ですな、しかし」
「それでもですか」
「はい、それは出来ませぬ」
どうしてもという返事だった。
「我等にしても」
「そう言われますか」
「はい」
とてもという返事だった。
「それはおわかりですな」
「やはりそうですか」
「九州一統は我等の悲願を」
「その悲願を適え」
「そしてです」
そのうえでというのだ。
「関白様に」
「あくまでそうお考えですか」
「そうです」
義久は幸村に揺ぎのない声で答えた。
「それが島津家の決断です」
「戦いですか」
「そうです、九州を一つにしてからです」
「では」
「はい、若し関白様が来られても」
それでもというのだ。
「当家は戦います」
「あくまで、ですか」
「意地もありますし」
「武門の意地ですか」
「もっともその意地で家を潰すのは愚の骨頂」
このこともだ、義久はわかっていた。
それでだ、こう幸村達に言ったのである。
「意地で戦はしませぬ」
「勝てぬ戦は」
「九州統一は目指しますし」
「関白様とも戦うとなれば」
「戦います、むしろここで降ればどうなりますか」
秀吉、即ち天下と戦わずにというのだ。彼が攻めてきた時に。
「そうした者に関白様はどう断を下されますか」
「武門に相応しい行いではないので」
一戦も交えずに降る、武士として奮迅の戦いを見せずにだ。
「それでは」
「左様ですな」
「はい、どうしても」
「だからです」
「家を守る為にも」
「戦い当家の意地を見せます」
「そうされますか」
「島津家の戦とくとご覧あれ」
義久は笑って言った、そして。
彼の弟達もだ、笑って言った。
「我等も同じです」
「兄上と同じ考えです」
「あくまで戦います」
家を守る為にというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ