巻ノ五十二 島津四兄弟その三
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「先に進むにもな」
「しかし本陣に近付くにつれです」
「兵達の顔が変わっていますな」
「如何にも強そうな兵達がいるようになり」
「兵の数も増えています」
「実に」
「うむ、それでわかる」
兵の顔や数でというのだ。
「本陣が何処かな」
「ですな、この迷路の如き場所でも」
「それでもですな」
「わかります」
「実に」
「そうじゃ、では気配を消すぞ」
十一人のそれをというのだ。
「ただこの格好になるだけでなくな」
「では」
「その様にして」
「そしてですな」
「本陣に行きますか」
「そうするぞ」
こう言って実際にだった、主従は気配も消してだった。そのうえで兵の顔が強くなり数も多くなっていく方に進んだ。
そしてだ、本陣に入りだった。
その奥の奥に行くとだ、四人の薩摩の言葉での話し声が陣幕の向こうから聞こえてきた。その声を聞いてだった。
幸村は主従にだ、こう言った。
「あれがな」
「はい、間違いないですな」
「ここがです」
「四兄弟のいる陣ですな」
「本陣の一番奥」
「そこですな」
「そうじゃ」
間違いなくというのだ。
「ここじゃ」
「では」
「これよりですな」
「話を聞きますか」
「ここから」
「うむ、気配は消したままじゃ」
言うまでもなくというのだ。
「よいな」
「はい、では」
「これより」
「そしてそのうえで」
「聞きましょう」
こう言ってだ、早速だった。
主従はその場で気配を消したまま聞き耳を立てて四兄弟の話を聞こうとしていた。だがここでその陣幕の向こうから声がした。
「ようこそ」
「!?」
「よく来られた」
こうした声が来た。
「入られよ」
「まさか」
「真田源次郎幸村殿と」
源四郎とも呼ばれなかった。
「家臣の方々ですな」
「それがし達だと」
「ははは、知っておった」
まさにというのだ。
「ここに来られた時かな」
「何ということか」
「もっと言えば見ておられた時から」
その時からというのだ。
「承知していた」
「では」
「待っていたのだ」
まさにというのだ。
「真田殿主従をな」
「何と」
「ははは、中に入られよ」
実に余裕のある落ち着いた声だった。
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