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第九十五話
第九十五話 はじめてのお料理
梨花の妹利奈は大人しい女の子である。しっかりした姉に隠れてひっそりとしているがそれでも姉を見習っているのか自分で何でもしようとするところがある。
裁縫も家事もよく手伝う。そして姉を助けていた。
「それでね」
ある日妹は姉に対して言った。
「今度はじめて料理作ってみようと思うんだ」
「料理を?」
「うん、いいかな」
妹は首を傾げて姉に尋ねた。
「もうそろそろいいかな、って思うんだけれど」
「そうね」
姉は暫し考えた後でそれに答えた。
「悪くないと思うわね」
「それじゃあ」
「ええ。けれど気をつけてよ」
梨花はここであえて厳しい顔をした。
「お料理といっても。火を使ったりするから」
「うん」
「危ないってことだけは覚えておいてね」
「わかったわ。それじゃあ」
はじめての料理はカレーになった。今度の日曜日の午後作る。両親はやはり仕事でいない。梨花がはじめての料理を食べる人となった。
「大丈夫かしら」
梨花の使い魔である蛇のジュリエッタが心配そうな顔で呟く。
「利奈ちゃんだけで」
「大丈夫なんじゃないかな」
そんな彼女に同じく使い魔のトカゲのピエールが言った。
「御主人様だって利奈ちゃんと同じ頃にはじめてカレー作ったけれど美味しかったじゃない」
「御主人様は別よ」
ジュリエッタはそう反論する。
「何でもできちゃんだから。魔女達の間でもリーダーでしょ」
「そりゃまあそうだけれど」
「利奈ちゃんって頼りないところがあるから。心配なのよ」
「ううん」
「まあまあ二匹共」
だがここで梨花が二匹に対して言った。
「今からそんなこと言っても何にもならないからさ」
「御主人」
「ここは温かく見守りましょう。いいわね」
「御主人がそう仰るなら」
「僕達には反論はありませんけれど」
「利奈ならやるって。私にはわかるわ」
「ううん」
「それじゃあここは見守ることにします」
「ええ、お願いね」
梨花はあらためて言った。だがその心の中では違うことを思っていた。
(何かあったら)
心の中で呟く。
(その時はあれを使おうかしら)
その心の中では別のことを考えていた。だがそれは今の時点では誰にも言うことがなかった。こうして利奈のはじめての料理がはじまるのであった。
第九十五話 完
2006・3・7
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