remember memory
ep.0001 remember memory 池野&箱部 中編2
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なくても分かった。
続けて喋ろうとする旦那を止めて、救急キットのような入れ物から錠剤を取り出した。
「これは、安楽死するための薬です。お二方にはこれを飲んで頂きます。どうか、安らかに。」
池野は夫婦が薬を飲んだのを確認すると部屋を出た。
部屋を出て少し歩くと娘の寝室らしき部屋を発見した。
部屋に入ると、ベッドで1人の少女が池野を見つめていた。
娘は、怖いだろう状況で恐怖感を一切感じさせないように話し出した。
「貴方様は、私を殺しに来たのですか?」
池野は、娘の発言にまったく反応しなかった。
「俺は貴方を守るように貴方のお父様とお母様に約束しました。だから貴方を殺しません。」
「では私が貴方に死ぬように命じれば、貴方は命を絶つのですか?」
池野はナイフを目の前に差し出すことで覚悟を示した。
娘は池野の行動に動揺しなかった。
彼女も等しく覚悟を決めていたからだ。
「貴方の覚悟は十分伝わりました。なら貴方には私を守るように命令します。」
池野は顔を上げて娘の顔をはっきりと確認した。
娘は涙すら流さず、池野を見ていた。
2人の目が合うと娘は優しく微笑んで自己紹介をした。
「私は"箱部鈴菜(はこべ りんな)"あなたは........?」
少し間を置いて、池野も自己紹介をした。
「俺はイズです。」
池野には名前がなく、コードネームが彼の名前になっていた。
箱部を連れて部屋を出る。
玄関から堂々と家を出ようとすると、箱部が池野の足を止めた。
「この家を燃やしてください。」
池野は箱部の言葉に目を疑ったが、すぐに納得した。
「体が残っていては天国に行けませんから。」
池野は箱部の望み通り、屋敷に火を放った。
大きくそびえ立っていた屋敷は紅蓮の炎に包まれてゆっくりと崩れていく。
不意に池野の耳に囁くように声が聞こえた。
『君にもいつか自分の生に意味を与えてくれる人に出会うことになるだろう』
箱部が燃えていく屋敷から池野の顔へ目をやると、池野は静かに涙を流していた。
その日を境に池野はアナコンダには戻らなくなった。
今まで、自分が奪ってきた他者の命の分も彼女のために尽くそうと考えたからだ。
すると、箱部が池野の涙を拭った。
箱部は池野を抱きしめて、あやすように言った。
「よくこれまで頑張りましたね。」
後ろから優しく頭を撫でる。
池野はこれまで感じたことのない愛情のようなものをこの日、初めて知ったのだった。
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