90部分:第八十九話
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第八十九話
第八十九話 遊び人
葵はそのまま友人達と街へ出て行く。そしてまずは喫茶店に入った。
「あそこで男と待ち合わせかしら」
「その可能性はあるね」
「うん」
ジップとハリーがそれに頷く。赤音達は帽子や鞄で身を隠してそのまま店に入った。
「子供一人」
「はい」
少し怪しい様子であったが店員は彼女達を通した。赤音は葵の向かいの席に座ろうとした。だがそれはジップに止められてしまった。
「ちょっと御主人様」
「何?」
小声で鞄から囁くジップに尋ねる。
「そんな近くじゃ危ないじゃないの。ばれるわよ」
「そうかなあ」
「そうかなあ、じゃないわよ。ばれたらどうするのよ」
「それは困るけれど」
赤音は呑気に返す。
「そうでしょ?だから離れなさい」
「離れるの?」
「離れてもちゃんと見えるから」
「そうだよ、御主人」
ハリーも話に入って来た。
「ここは少し離れた場所から見た方がいいよ。それでもわかるから」
「ハリーまでそう言うのなら」
赤音はそれに従うことにした。そして彼女と二匹の使い魔は席に座った。そしてそこで葵を見るのであった。
「それで昨日ね」
「うんうん」
葵は赤音達には気付かずそのまま友達とお喋りに興じていた。お茶やケーキを食べながら楽しく談笑している。
「今のところは何もないみたいね」
「うん」
赤音達は人参のケーキを食べながら話し合う。ジップは人参を、そしてハリーはケーキについている胡桃を食べていた。そして赤音がケーキを食べていた。
暫くして葵は友人達と一緒に店を出た。それを見て赤音も店を出ようとする。だがここでハリーが言った。
「お金持ってる?」
「大丈夫よ」
赤音はにこりと笑ってそれに答えた。
「お母さんから貰ったお小遣いがあるから」
「それならいいけれど」
「お金だけはしっかりしてなさいって言われてるからね」
赤音はニコリと笑って言う。
「それは心配しないで」
「それなら」
「まあ大丈夫かな」
二匹は主人がドジなことを知っている。だが今回は本当にお金を持っていた。とりあえずそれには胸を撫で下ろした。
「てっきり木の葉でお金を作るのかと心配してたよ」
「私まだそんな魔法覚えてないし。それに木の葉じゃ美樹ちゃんの方が相応しくない?」
「それもそうだけれど」
「まあそんなことは置いておいて行きましょう。早くしないとお姉ちゃん見失っちゃうよ」
「わかってるよ」
そして赤音達はまた葵の追跡をはじめた。そのまま後ろをつかず離れずついて行く。
第八十九話 完
2006・2・14
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