第二部 WONDERING DESTINY
CHAPTER#1
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その後全部ブッ壊れた 「治りません」 じゃあ通らねーからな」
「フフッ」
少女は殆ど曲線になるような、柔らかい笑顔で懸念に応じる。
「無用の心配よ。“封絶と同じ” って言ったでしょ?
“因果孤立空間” の裡ならどれだけ 「破壊」 が在っても
存在を 『喰われたり』 しない限り「修復」は可能よ。
勿論ソレにはおまえにも協力してもらうけど」
「フン、それなら別に、依存はねーがよ」
青年はブッきらぼうに言葉を切り、その美貌をやや斜傾に向ける。
ソレは彼特有の、不器用な照れ隠しだった。
共に過ごした時間はそんなに長くはないが、
少女は自分でも知らないうちに気がついていた。
そしてソレを、何故か無性に誇らしく想った。
青年自身も気づいていない、知っているのは自分だけかも知れないという
奇妙な優越感と共に。
「……」
「……」
両者に舞い降りる、沈黙の帳。
気まずいわけではなく、寧ろ心地よい緊張感。
互いの所作をそっと窺 っているような、心の射程距離。
「始めぬのか?」
穏やかな雰囲気で黙する二人に、
荘厳な賢者の如き声が突如来訪する。
「ッひゃわッッ!? アラ、アラ、アラストール!?」
その喫驚までも愛らしい少女の胸元で、
神聖なる光を称え周囲に金色のリングが絡められた漆黒の球、
天頂部を細い銀鎖で繋がれたペンダントから声はあがっていた。
声の主は、深遠なる紅世真正の魔神、
その真名 “天壌の劫火” アラストール。
眼前の少女の 「契約者」 であり、
普段はその強大な力を宿す 「本体」 を裡に眠らせ、
己の意志のみをペンダント型の神器 “コキュートス” の能力を
通して現世に表出させているのであった。
「……」
しかし今、その現世に表出されている “王” の意志は、
何故か不機嫌極まりない。
ソレは言わずもがな、先刻の少女の自分に対する態度。
言葉には出さず、“そんなコトは” 万が一にも(億が一にも)
胸に抱くコトはないというのを知ってはいるが、
先刻の少女の言葉後にいたの?
という感 覚を察したからであった。
眼前の(自分も見込みが在ると密かに認めている)青年に、
自身の存在を時空間の彼方にまでブッ飛ばされて
不興極まりない心中をアラストールは何とか呑み下し、
声だけは平静そのもので告げる。
「 “アノ者” も拵 えは出来ているようだぞ」
そう言って喋るペンダントが指差した(?)先。
青年と少女から数メートル程離れた石畳の上。
紅顔の美男子を絵に描いたような人物が両腕を腰の位置で端整に組み、
見る者全てに安らぎを与えるような微笑をこちら
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