86部分:第八十五話
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第八十五話
第八十五話 そして次には
運動はこうして順調に進んでいた。だが身体を動かすだけでは単純にはダイエットと言えないのである。やるべきことはまだあるのだ。
「今度は食べ物だよ」
「食べ物」
「そうそう。旦那っていつもカロリーの高いものを食べてるだろ。それがよくないんだよ」
「カロリーが高いと言ってもねえ」
だがタロはライゾウのその言葉に少し不満げであった。
「どうかしたの?」
「犬と猫じゃ食べるものがそもそも違うよ」
「い、いやそれでも」
痛いところを突かれながらもまだ言う。
「食べ物を工夫するのは大事なんだよ」
「それはわかってるけれどね」
「それじゃあ」
ライゾウは本題に入った。
「旦那は牛肉とか食べてるよな」
「うん」
「それがよくないんだよ」
「じゃあどうすればいいんだい?」
「ここはヘルシーにね。鶏肉とか魚とか」
「そもそもドッグフード自体がそうなんだけれど」
「いや、それでも」
タロの言う通りそもそも犬と猫では食べるものが違うのだ。ライゾウはそれが今一つわかっていなかった。だから話も少しチグハグであった。
「そこを改善してね」
「それなら食べる量を減らせばいいんじゃないの?」
タロは言った。
「えっ!?」
「だからさ、食べる量を。それならカロリーも減るし」
「そういえば」
「まさかわからなかったの?」
「ま、まさか」
慌ててそれを否定する。だがその様子からそれが真実だとわかる。
「当然わかっていたよ」
「そうなの」
白々しい言葉だったがそれ以上は詮索しなかった。そして何事もなかったかのように話に戻る。
「それじゃあ食べ物を減らそう」
「うん」
「これで効果があるかな」
「おいらを信じなさいって」
ライゾウは後ろ足で立ち、右の前足で自分の胸をドンと叩いて言った。
「大丈夫だから」
「それじゃあ信じるよ」
「うん。ついでにおいらもダイエットしているから」
「そういえばそうだったかな」
「忘れてたのか?」
「いや、自分のことで精一杯で」
「もう、しっかりして欲しいな」
「ははは、御免御免」
こうして今度は食事制限に入った。当然運動は続けている。そして遂に結果が出る時がやって来た。
第八十五話 完
2006・1・28
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