第一章
[2]次話
鬼軍曹
石澤晋太郎二曹は教育隊で班長をしている、それもそれぞれの班を預かっておらず甲板班長という班全体の風紀や生活を監視する班長だ。
その監視と指導は厳しくだ、教育隊の班員からはこう言われていた。
「自衛隊らしいな」
「本当にな」
「鬼だな」
「鬼班長だな」
こう言われていた、そして。
二曹という階級からだ、こんなことも言われていた。
「二曹は昔の軍隊で言うと軍曹か」
「それに相当するってな」
「じゃあ鬼軍曹だな」
「そのまんまだな」
彼等はこのことに気付いた、それでだった。
石澤の仇名は鬼軍曹になった、そしてだった。
そう言われてもだ、石澤はその鋭い目を持つ厳しい顔で言った。
「いいことだな」
「鬼軍曹って言われてることが」
「それ自体がですね」
「ああ、いいことだ」
他の班長達、それぞれの班を預かる彼等に班長室で言った。
「そう言われたかったんだよ」
「何か軍隊みたいで」
「それで、ですね」
「まさにですか」
「それならもっとだ」
かえって乗っている言葉だった。青い海上自衛隊の作業服姿で自分の席に座ったうえで腕を組んで言っている。
「鬼になるか」
「班員達をしごく」
「そうするんですね」
「ビシビシ指導してやる」
笑って言うのだった。
「これからな」
「そうですか」
「私達も指導してますけれど」
「それでもですね」
「さらにですね」
「そうしてやる、あいつ等が修了するまでな」
教育隊の教育をというのだ、そして。
実際にだ、石澤は班員達の生活を細かいところまで指導していた、勿論監視もだ。
制服や作業服のアイロンがけが甘い、靴がよく磨かれていない、ベッドの手入れが悪いとだ。
即座にその班員に腕立て伏せをさせてからだ、やり直しをさせた。それで班員達は彼を鬼軍曹と呼び続けた。
しかしだ、どの班員もだった。
「自衛隊だからな、ここは」
「そういうものだしな」
「まあこうした指導はな」
「当然か」
「理不尽じゃないな」
「ああ、そうだぞ」
班長の一人がだ、その班員達に言った。
「部隊に行くとな」
「もうそれこそですよね」
「こんなものじゃないんですね」
「もっと凄いんですよね」
「ああ、ここではな」
この教育隊ではというのだ。
「はじまりだからな」
「そのはじまりで、ですか」
「びしっとですね」
「叩き込む」
「そういうことですね」
「そうだ」
その通りと言う返事だった。
「だからな」
「甲板班長もですね」
「あえてなんですね」
「私達にびしっと叩き込んでいる」
「そういうことなんですね」
「そうだ」
その通りという返事だった。
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