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第八十四話
第八十四話 木登り
「いいんだな、旦那」
ライゾウの声も強いものになっていた。
「ああ」
「おいら達だったら何ともないけれど犬にはしんどいと思うけれどな」
「それでもやってみるよ」
タロの声は強いままであった。
「ダイエットの為だからね」
「それじゃあやるか」
「よし、じゃあまずは」
そう言って身体を屈める。
「力を溜めて」
上を見上げながら言う。
「えいっ」
そして飛び上がった。そのまま上の木の枝を目指す。
だがそれは僅かに届かなかった。ライゾウは仕方なく着地した。
「ちぇっ、届かなかったか」
「犬はそうやって登るんだな」
「ああ。猫みたいにはできないからね」
タロはこう答えた。
「爪がね。木登りには使えないから」
「そういやそうだったな。だからこれはしんどいか」
「けれどやり方はあるから。先に言っといて」
「了解」
ライゾウはそれに頷いて木登りをはじめた。
「こうして登るのも確かに運動にいいな」
登りながらこう呟く。確かにこれは彼にとっても非常にいい運動になっていた。
「旦那」
ライゾウは木のてっぺんからタロに対して声をかけた。
「こっちまで来れるかい?」
「やってみるよ」
そう答えながら考えに入った。
「そうだなあ」
「どうするんだよ」
「ちょっと考えがあるんだけれどね。そこでじっとして掴まっててね」
「!?こうかい?」
「うん、そんな感じで」
ライゾウはしゃがみ込んで木にしがみついた。タロはそれを見てまた頷いた。
「揺れるからね。気をつけて」
「ああ」
タロは跳んだ。そしてまずは木の幹を蹴った。
「おっと」
木全体を衝撃が襲ったがライゾウはそれを耐えた。そしてタロの動きを見守った。
木の幹を蹴ったタロはそのままあがった。そして今度は枝を蹴ってまた上にあがる。そしてそうした蹴ってあがる動作を続けてライゾウのところまで近付いていく。彼のところまで来たのはあっという間であった。
「どうかな」
「いや、凄いよ」
ライゾウはそれを見て素直に賞賛の言葉を述べた。
「おいらなんかよりずっと凄いじゃないか」
「そうかな」
「何か自信なくすなあ。身体動かすことじゃ旦那には勝てそうにないよ」
「まあ犬と猫の差はあるけれどね」
「いや、それでも」
そんな話をしながらまた休憩に入った。二匹は木の上から街を眺めていた。
第八十四話 完
2006・1・19
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