第四章
[8]前話
「何か気になったんだよ」
「俺が言ったことだな」
あの話をしたその彼がオーフェンに言ってきた。
「それだな」
「ああ、インディアンの言い伝えだな」
「コヨーテの鳴き声はな」
「そっちの方に行くと助かる」
「その話したな」
「それを思い出したんだ」
オーフェンはこう彼に答えた。
「だから急いだんだがな」
「声のした方にか」
「声のした方には行ってないけれどな」
声は右側から聞こえてきた、彼等が進んだのは前である。
「それでもな」
「ふと思い出したんだな」
「迷信だと思ってるさ」
この考えは今も変わらない。
「俺達に負けたインディアン達のな」
「けれど気になってか」
「急ごうと思ったんだよ」
「そして急いだんだな」
「ああ、それで用心で端を歩いてな」
そうもして、というのだ。
「そうして帰ろうって皆に言ったな」
「こうなったな」
「危なかったな」
オーフェンがこう言うとだ、仲間達も言った。
「ああ、そうだよな」
「若し歩くのが早かったら本当にな」
「あの岩が俺達の上にだったかも知れないな」
「それで全員お陀仏か」
「そうなってたかもな」
「若しもな」
オーフェンは今も岩を見ている、そのうえでの言葉だ。
「コヨーテの声を聞いてそう思わなかったら」
「その時はな」
「本当に死んでたかもな」
話をした仲間にこうも言った。
「冗談抜きにな」
「そうだよな」
その彼もオーフェンの言葉に頷いた。
「迷信でもな」
「馬鹿には出来ないか?」
「少なくとも俺達は助かった」
オーフェンが自分の頭では迷信と思っているインディアン達の言い伝えによってだ。
「そのことは確かだな」
「そういうことか、まあとにかくな」
オーフェンは仲間の言葉を聞いてからこうも言った。
「帰るか、村にな」
「そうだな、命は助かったしな」
「もう危ない場所はない」
「後は落ち着いて帰るか」
「村まで獲物を持って行ってな」
そうしてとだ、仲間達も言ってだった。
オーフェンは彼等と共にあらためて村への帰り道についた、その彼等の耳にまたコヨーテの遠吠えが何処からか聞こえてきた、それは彼等の無事を祝う様に何処か明るいものだった。月夜の中聞こえるそれは。
遠吠え 完
2016・2・20
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