第一章
[2]次話
遠吠え
夜になるといつも聞こえてくる、あの声が。
ジャック=オーフェンはその声を聞いてだ、狩り仲間に言った。
「まただな」
「ああ、今夜もだな」
「鳴いてるな」
「コヨーテがな」
「今夜も」
「何か夜になるとだな」
オーフェンは野宿しているその集まりの中でまた言った、彼等が囲んでいるそのかがり火を見ながら。
「鳴くな、あいつ等」
「狼と一緒だな」
「そもそもあいつ等狼の仲間だしな」
「夜に鳴くのは当然だな」
「コヨーテもな」
「コヨーテの鳴き声はな」
その声自体についてもだ、オーフェンは言った。黒髪も髭も不精で着ている服は一ヶ月も着たままで汚れている。青の目の光は強い。
「何か独特だな」
「狼と比べてな」
「何か違うのは確かだな」
「妙に心に残る」
「そんな感じだな」
「そうだな、別に俺達には何もしてこないがな」
それでもとだ、オーフェンはまた言った。
「妙に残るな」
「耳にな」
「それで離れないな」
「不思議な声だな」
「確かにな」
「そういえばな」
ここで仲間の一人がこんなことを言った。
「この近くのインディアンの話だけれどな」
「居留地のか?」
「ああ、何でもコヨーテの鳴き声はな」
それはというのだ。
「導きらしいな」
「導き?」
「その声の方に行くとな」
そうすればというのだ。
「命が助かるらしいな」
「何だその話は」
オーフェンはその話を聞いてすぐにだ、眉を顰めさせて言った。
「迷信だろ」
「インディアンのっていうんだな」
「ああ、そうだろ」
こう仲間に返した。
「どう聞いてもな」
「インディアンのな」
「あいつ等はな」
そのインディアンのこともだ、オーフェンは言った。
「結局俺達に負けて引っ込められた」
「野蛮人共だな」
「そうだろ、所詮な」
「まあな、結局はな」
その仲間もこう返す。
「アメリカに負けた奴等だ」
「しぶとかったにしてもな」
「キリスト教徒でもないしな」
「そんな連中だからな」
それでというのだ、オーフェンは。
「その言ってること一々気にしていてもな」
「仕方ないっていうんだな」
「迷信を信じる奴は馬鹿だ」
オーフェンは彼だけでなく他の仲間達にも言い切った。
「そんなのだったらスペインにも負けていたさ」
「ああ、この前の戦争な」
「あっさり買ったな」
「奴等随分と不甲斐なかったな」
「頼りになるのは銃とな」
彼等が今手にしているそれと、というのだ。見ればどの者も見事なライフルを傍に置いている。手入れもしっかりとされている。
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