第四章
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「ここは戻りましょう」
「是非です」
「そうしましょう」
「皇帝のご命令通り」
「ここは」
「いや、皇帝のご命令だが」
グルーシーは正面を見たまま彼の下にいる士官達に答えた。
「プロイセン軍を追え、だ」
「だからですか」
「まだ彼等を追いますか」
「本軍に戻らずに」
「そうされますか」
「そうだ、追撃を続ける」
こう言ってだ、彼は追撃を続けた。しかし。
彼が追っているプロイセン軍は戦場に戻りフランス軍への攻撃にかかった、イギリス軍の防戦に足止めをされていたフランス軍はそれで総崩れとなった。
戦場にいるナポレオンにだ、側近達が必死の声で叫んだ。
「皇帝、もう駄目です!」
「戦線が崩壊しました!」
「プロイセン軍が来ます!」
「イギリス軍が反撃に転じました!」
「親衛隊が殿軍を務めます!」
「ですからここは!」
必死に撤退を勧める、そして。
ナポレオンも決断した、だが彼はここで叫んだ。
「グルーシーは何処だ!何処にいる!」
こう叫んだ、だが。
グルーシーはその場におらずフランス軍は潰走した、そのフランス軍を親衛隊が必死に殿軍として守り撤退させた。
親衛隊は一人残らず戦死するまで戦った、そのかいがありフランス軍はナポレオンも含めて撤退出来た。だが。
フランス軍は敗れた、そしてナポレオンの命運も決まった。彼は今度は絶海の孤島セント=ヘレナ島に送られることとなった。
その顛末を見てだ、タレーランとフーシェは再び密談の場を持った。その場でタレーランはフーシェに対して言った。
「三ヶ月はもったな」
「三ヶ月はな」
フーシェも応える。
「私はもたないと言ったが」
「しかし」
「まあ大体そうなった」
「百日だからな」
「彼は確かに英雄だ」
現在もとだ、フーシェもこう言いはした、ナポレオンを認めてはいるのだ。
しかしだ、それと共にこうも言った。
「だが確かにおかしくなっていてだ」
「それがさらに酷くなっていた」
「以前の彼ならああした過ちは犯さなかった」
眉を顰めさせてだ、フーシェはタレーランに言い切った。
「グルーシーを選ぶなぞ」
「そう、彼は言われた仕事は的確にこなすが」
タテーランもグルーシーは知っているので言う。
「だが融通が利かない」
「ああした場面で軍を任せてはいけない」
「重要な戦力を」
「以前の彼ならグルーシーをあてなかった」
決してというのだ。
「それで彼は失敗した」
「そして敗れた」
「そういうことだ、彼は本当におかしくなっていた」
「以前はあった人を見る目が」
「だからああなった」
「君の言うことはわかった、だが」
ここでだ、タレーランは。
語ったフーシェに対してだ、思わせぶりな笑みでこう問うた。
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