第三章
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「皇帝、ハプスブルク家の主となっているがね」
「そう言われますか、しかし」
「しかし?」
「陛下、申し上げても宜しいでしょうか」
皇帝に対してだ、彼はこう申し出た。
「あえて」
「うん、何でも言ってくれるかな」
皇帝もよしとした、そしてだった。
友人はそれを受けてだ、皇帝にあらためて言った。
「皇后陛下がそうであられることは」
「そのことはだね」
「そうです、国そして家の主であられる為にはです」
皇帝を見て言うのだった。
「陛下あってだと思います」
「私がかい?」
「常に陛下は皇后陛下の傍におられますね」
「まあそれはね」
皇帝もこのことは否定しなかった。
「子供達の傍にも出来るだけね」
「左様ですね」
「私も夫であり父親だからね」
「ですから」
「その分だけなんだ」
「はい、皇后陛下の支えになっています」
「だといいけれどね」
皇帝はそれはどうかという顔で友人に返した。
「私も」
「そうです、ですから陛下も己を必要以上に低く見られることはありません」
「だといいけれどね」
「はい、是非」
「それならね」
皇帝はそれならと頷いてだ、そのえで。
この場はそんなことはないと思いながらも友人の言葉を聞いた、だが。
女帝はある日だ、その場にたまたま皇帝がいないのを見て侍女達に寂しそうにこう言ったのだった。
「陛下がおられないだけで」
「どうしてもですね」
「それでもですね」
「寂しい」
「そうなのですね」
「はい、そう思えて仕方なりません」
こう言うのだった。
「それだけのことで」
「では」
「皇后陛下が政務にも励むことが出来ることも」
「やはりですね」
「皇帝陛下があってこそ」
「あの方がおられるからこそ」
「そうなのです」
まさにと言うのだった。
「私はあの方がいるからこそ何事にも励むことが出来るのです」
「もうすぐ戻られますので」
侍女の一人がその寂しそうな顔になった女帝に言った。
「ご安心下さい」
「それでは」
女帝はその侍女の言葉に頷いた、そして。
皇帝が戻って来ると実際にだ、満面の笑顔になり安心して二人の子供達の場に行き母親として彼等に教えた。子供達も彼女が偉大なる母だと思った、彼女だけで。
マリア=テレジアは偉大なる女帝であり貞淑な妻であり十六人の子の母親であると言われていた。だがその彼女は。
夫であるフランツ=シュテファン=ロートリンゲンが観劇の帰りに急逝するとその時から急に覇気がなくなっていったという。髪を切り喪服を着て自分の幸福な日は終わったと言った、そしてその時多くの者がわかった。この偉大なる女帝、偉大なる母親はお飾りと思われてきた自称余所者の夫がいてこそだったと。その時になってはじめてわかったの
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