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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十四話 哀しみは優しさを誘う……
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なところが素敵だって言う子もいるけど私はちょっと苦手。それに比べると元帥はいつも穏やかに微笑んでいて優しそう。全然軍人らしくない所がとっても素敵。

今日もまた素敵な所を発見。皆が元帥は怒ると怖いって言ってたけれど本当だった。さっき皆元帥の前で青くなっていたから。でもあれは皆が悪いと思う。元帥が怒るのは当たり前。シャンタウ星域の会戦の英雄をあんな風にひどく言うなんて信じられない。

「あの、先程は済みませんでした。せっかく来ていただいたのにあんな失礼な事を言うなんて……」
「全然気にしていませんよ、フロイライン」

元帥は柔らかい微笑を浮かべたまま答えてくれた。やっぱり素敵。
「フロイラインは私が怖くありませんか」
「いいえ、全然怖くありません。元帥はとても良い方だと思います」

私の言葉に元帥は軽く苦笑した。私はそんなに変なことを言ったのだろうか?
「私、元帥に御礼を言いたかったんです」
「御礼?」

元帥は不思議そうな表情で私を見た。やだ、かわいい。
「フレーゲル男爵のことです。元帥が助けてくださったと聞きました」
「……ご存知なのですか」

私は元帥の言葉に頷いた。
「本当に有難うございました。父はとても喜んでいました」
「……」
「父はフレーゲル男爵を息子のように思っていましたから」

元帥がターンに合わせて体を寄せてきた。
「そのことは余り言わないほうが良いでしょう。公に出来ることではありませんから」
囁くように言葉をかけてくる。思わず頬が熱くなった。元帥、お願いだから余り近づかないで。

「元帥、どうして私と踊りたいなどと言ったのですか? もしかして父を困らせようとなさったのですか?」
もしそうなら少し寂しい。父を困らせるためだなんて思いたくない。

元帥は微かに笑って私に答えてくれた。
「少しそれもありますね。でもアントンからフロイラインが私と踊りたがっていたと聞きました。それが大きいと思います」
「まあ」

「多分、これが最初で最後のダンスでしょうね。ブラウンシュバイク公も私達を呼ぶことは二度と無いでしょう」
「……」

「フロイラインと踊れてよかったと思います。貴女が私の想像よりずっと素敵な女性で良かった……」

元帥は少し寂しそうな表情で呟いた。元帥はずるい。私を困らせるような事ばかりする。もう直ぐダンスも終わりなのに、だんだん元帥が好きになる。どうしよう……。もう少し、もう少しだけ元帥と踊っていたい……。



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