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ヒトデ
第二章

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「これは駄目です」
「えっ、駄目とは」
「はい、これは最悪です」
 大村は穏やかな顔を曇らせて男に言った。
「これではヒトデは退治出来ません、それどころか」
「といいますと」
「はい、ヒトデは真っ二つにされてもです」
 それでもというのだ。
「死なないのです」
「それは本当ですか」
「プラナリアをご存知ですか」
 大村はこの生きものの名前をここでだしった。
「あの生きものを」
「確か切ればそこから生えてくる」
「はい、そのプラナリアと同じでして」
「ヒトデはですか」
「切るとです」
 真っ二つにしても八つ裂きにしてもというのだ。
「そこから生えるのです」
「じゃあヒトデを真っ二つにしますと」
「二つに増えます」
 そうなるというのだ。
「まさに」
「そうだったんですか」
「はい、ですが」
「ですがとは」
「これまでそうしてですか」
 大村は漁師に尋ねた。
「村の皆さんはヒトデを退治されていたんですか」
「そうですか」
「それは逆効果です」 
 全く以て、という口調での返事だった。
「かえってヒトデを増やすだけです」
「道理でかえって増えている筈ですね」
「はい、ですからすぐにです」
 それこそというのだった。
「それは止めて下さい」
「わかりました、ただ」
「どうして退治するかですね」
「本当に困ってるんです」
 困った顔になってだ、漁師は大村に言った。
「ヒトデに魚や珊瑚がやられて」
「そうですね、退治の仕方ですね」
「切って駄目ならどうすれば」
「はい、干すのがいいんです」
「干すんですか」
「獲ったヒトデを乾燥させます」
 大村はその具体的な方法をだ、漁師に話した。
「そうすればいいです」
「丘の上で」
「そうすればヒトデは死にますので」
「そうすればいいんですね」
「はい、ヒトデは干されると弱いです」
「海の中にいるからですね」
「はい」
 大村は微笑み漁師に答えた。
「どうしても日光に弱いです」
「だから干せばいいんですね」
「後は焼いてもいいです」
「ああ、そうしてもいいんですか」
「これはどの生きものにも効きますので」
「熱ですね、つまりは」
「ヒトデはそれに弱いです」 
 切って死ぬ生きものではないが、というのだ。
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