第三章
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「今日も何とかね」
「踊れたっていうんだな」
「それが出来てな」
「よかったな」
「本当にね、不満なところはあるけれど」
その踊りにだ。
「それでもね」
「出来たからか」
「よかったわ、じゃあね」
「次の舞台もだな」
「頑張るわ」
「一つの舞台が終わってもすぐにだな」
「まだアイーダの上演はあるし」
つまり彼女の仕事は続くということだ。
「それでね」
「次だな」
「次の舞台はマクベスよ」
「またヴェルディか」
「魔女の場面でね」
魔女達が出て来て儀式の後で踊る、その場面で出るというのだ。
「踊るから」
「じゃあそっちの用意もか」
「するわ」
「わかった、じゃあ頑張れよ」
「いつも助けてくれて悪いわね」
今日は俺が料理を作った、これでも料理は得意だし作るのも好きだ。それで俺の分と彼女の分も作って出迎えたのだ。
「私のも作ってくれて」
「バレリーナ用の食事か」
「それも作ってくれてね」
「当たり前だろ」
これが俺の返事だった。
「だって付き合ってるからな、俺達」
「それでなのね」
「これ位はな」
本当に何でもないとだ、彼女に言った。
「普通だよ」
「そうなのね」
「ああ、じゃあな」
「今からなのね」
「食おうな」
「ええ、ただ」
ここで彼女から俺にこんなことを言ってきた。
「あなたもうお酒も煙草もやらないわね」
「どっちも止めたよ」
「私に気を使ってくれてるの?」
「飲めないだろ、酒」
バレリーナならとだ、俺は彼女に返した。
「だからな」
「お酒飲まない様にしたの」
「飲むことが出来ない相手の前で飲むのはな」
それこそだと思うからだ。
「それでなんだよ」
「煙草は煙がなのね」
「身体に悪いからな」
吸うだけでも悪いがその煙もだ、周りにいる人間に影響を及ぼす。道理で最近禁煙が定着した筈だ。身体にいい筈がないものだから。
「止めたんだよ」
「その心使いが嬉しいわ」
「そっちが気を使ってくれてるからな」
本当にいつもだ、自分の料理だけでなく俺の料理も一緒に時間をかけて作ってくれる。そして何かと俺のことを案じてくれる。
だからだ、俺は彼女に言った。
「これ位は当然だよ」
「そうなのね」
「ああ、いいさ」
「その心使いが本当にね」
また俺に言った。
「有り難う」
「お礼はいいさ、じゃあ食ってな」
「それでなのね」
「寝ような」
「ええ、そうしましょう」
彼女は俺に微笑んで頷いてくれた、そしてだった。
二人で一緒にだった、仕事の後の夜を過ごした。俺は彼女と一緒にいられることがよかった、バレリーナの彼女ではなく彼女自身が。けれど皆はその次の日もこう言った。
「昨日の舞台よかったって?」
「彼女凄いいい
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