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第八十話
第八十話 華奈子の評判
「華奈子ちゃんは頭は凄くいいんですよ」
「それはわかります」
これは美奈子も同意であった。
「利発ですし。おまけに運動神経もいいですし」
「手先も器用ですしね」
「美奈子さんも手先は器用だそうですね」
「華奈子から聞いたんですか?」
「ええ」
どうやらその通りだったらしい。先生は頷いた。
「色々な楽器を使えるって。特に笛とバイオリンが得意なんですよね」
「はい、まあ」
そこまで聞いていては隠すこともなかった。美奈子は素直にそれを認めた。
「どっちも好きですし。他にはピアノなんかも」
「いいですよね、ピアノも」
「音楽はどれも好きなんです。ギターも弾けますよ」
「ギターもですか」
「歌は華奈子の方が上手だと思いますけれど。あとダンスも」
「華奈子ちゃんリズム感ありますからね」
「そうなんです。あれは本当に才能だと思います」
素直にそう述べた。美奈子は華奈子のそうしたところが内心羨ましいのだ。
「それに魔法も」
「美奈子さんも魔女の素質はあると思いますよ」
「えっ」
それを言われてどういうわけかギクッとした顔になった。
「そうでしょうか」
そしてそれに気付いて慌てて取り繕う。
「はい。華奈子ちゃんがあれだけ凄いんですからきっと美奈子さんも」
「けれど私は」
「大丈夫ですよ。美奈子さんも利発ですし」
「はあ」
「きっといい魔女になれると思いますよ」
「けれど私には音楽がありますから」
そう言って拒む。
「魔女になるつもりは。すいません」
「そうですか」
こうして話は終わった。二人は別れ先生は買い物に、美奈子は家に帰ることになった。
家の帰り道である。一人夕暮れの道を歩く美奈子の側に二つの影がやって来た。
「貴方達ね」
「はい」
その二つの影は美奈子の言葉に頷いてきた。
「危ないところでしたな」
「まさかあそこで華奈子様の先生に御会いするとは」
「気を着けてね。先生はちょっと気付いているかも知れないわよ」
「美奈子様のことを」
「ええ。だから魔法のことを口にしたのだわ」
美奈子はそれまで誰にも見せたことのないような警戒する顔で影達に対して語っていた。
「左様ですか」
「華奈子達には言わないと思うけれどね。けれど先生には注意しておいて」
「はい」
「わかりました」
影達は頷いた。そして何処かへと姿を消した。
「こればっかりは華奈子にも負けられないんだから」
最後にこう呟いた。そして美奈子は一人華奈子の待つ家へと帰るのであった。
第八十話 完
2006・1・6
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