ー決闘の後にはー
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この時ばかりは悪魔に見える。 三箇所を押さえられ、もはや逃げる事は不可能。 故に残された選択肢は一つだけ。
「……もう好きにしてくれ」
◇ ◇
「はぁ、なんだかボス戦よりも疲れた気がする
部屋の片付けをしていたアスナがこっそりとため息を吐いた。 すでに『シィちゃんお手製メイド服』から私服へと着替えられているところを見るに、シィの暴走は治まったらしい。
キリトはエギルの手伝いに呼ばれ、シィも「ちょっと急用が」と慌ただしく出て行ったので、エギルの店の二階には、ベッドでうたた寝するユーリとアスナの他にいない。
最終的にもっとも被害を被ったユーリに多少の申し訳なさを感じつつ、掃除を進めていると「……んっ」と小さな息づかいが聞こえた。 うたた寝から、完全に眠りに落ちたらしい。
「……こうしてみるとユーリ君って意外と可愛い、かも」
いつものクールな面影は何処へやら……すやすやと安らかな寝顔を晒す彼を見てにアスナは頬を綻ばせた。そんな寝顔を見つめること暫し。 何か思い立った様子のアスナは一旦掃除の手を休めると、ベッドの端に腰掛ける。 彼がよく眠っているのを確かめると 恐る恐る彼の頭の上でピコピコと動く犬耳へと手を伸ばし、その柔らかな感触に驚いた。 まるで上質なシルクなような手触りに感動しつつ、犬や猫にするように耳の裏側を優しく掻いてみる。 それが心地よかったのか、ユーリはにへらと表情を崩し無防備な寝顔を晒した。 それに庇護欲を刺激され、優しい手つきで頭を撫でるのに夢中になる。
だが、静かな室内にギシリと板が軋む音が響き急速に現実に引き戻される。 音の方向ーー部屋唯一の出入り口である扉が僅かに開けられ、その隙間からシィがジトーッとした目つきでアスナの所業を見ていた。
「ひっ!?」
「しっーー!」
慌てて口を両手で押さえ、悲鳴を堰き止める。 シィが咎めるような視線と共に、口に人差し指を当て「静かに」とサインを送るとなるたけ音を立てずにベッドの側までやってくる。 そして、にこぱーと眩しい笑顔を見せると単刀直入に切り出した。
「で、どうでした? ワンコの撫で加減は」
「……気持ち、よかった、です」
感想を述べた手間、何かイケナイことをしているんじゃないかと錯覚に陥り、赤くなったアスナの横では仲間を得て嬉しいのかシィがしきりに頷いていた。
それを横で見ているとアスナはふとあることが脳裏に浮かんだ。
「そういえばさ。 シィちゃんって『結婚』ってどう思う……?」
「はい?」
「その、君たちとっても仲いいし結婚は考えないのかな〜って。 も、もちろんシステム的な意味でだよ?!」
シィは「あぁ、そっちね」と納得するが、首をゆっくりと横に振った。てっきり『結婚』をしてるか、考えてる
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