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第七十六話
第七十六話 甘さ
かくして春奈と四人は春奈の家に集まった。そして玄関で夏雄を出迎えたのであった。
「あっ、来てたの。只今」
学校から帰って来た夏雄はさわやかな顔で五人に挨拶をした。その笑顔を見ても春奈が自慢するだけはあった。
「はい、お帰りなさい」
五人はにこやかに笑って夏雄に挨拶をした。
「西瓜がありますよ」
「西瓜」
それを聞いた夏雄の目の色が変わった。
「秋なのに?ああ、今は冬でも売ってるね」
「はい」
五人は頷いた。
「僕は西瓜が大好きなんだ」
夏雄は靴を脱ぎながら上機嫌で語りはじめた。
「あの甘さがね」
「どの果物や野菜でも好きなのよ、甘ければ」
春奈がここで他の四人にそっと囁く。
「やっぱり」
「マンゴーでもライチでもパイナップルでも苺でも同じこと言って食べるのよ。そこにシロップや砂糖をたっぷりとかけてね」
「果物にまで」
「チョコレートにもかけるわよ。パウダーをね」
「止めて」
「何か胸焼けがしてきたわ」
「それでその西瓜だけれど」
靴を脱ぎ終えた夏雄は家に上がり五人に尋ねてきた。当然五人のヒソヒソ話は聞こえてはいない。
「何処にあるのかな」
「台所です」
梨花がにこやかに笑って答えた。
「もう切っておいてますよ」
「えっ、用意がいいね」
夏雄はそれを聞いて顔をさらに明るくさせた。
「それじゃあ悪いけれど早速」
「はい」
こうして五人は夏雄について台所に入った。そしてテーブルに座りその上に置かれている西瓜をそれぞれ手に取った。
「それじゃあまず」
夏雄は砂糖に手を向けようとした。
「あっ、待って下さい」
だがそれを美樹が制止する。
「?どうしたの」
「もう砂糖はかけてあります」
「そうなの」
「はい。切った時に。かけていますから」
「だったらもういいね」
赤音も言った。夏雄はそれを聞いて納得した。
「はい」
「それじゃあ」
そして砂糖を元の場所に戻した。
「頂きます」
「頂きます」
「ねえ」
春奈がまた四人に囁いた。
「本当にあれでいいの?」
「うん。いいと思うよ」
四人を代表して華奈子が答えた。
「だから。安心して見ていて」
「わかったわ。それじゃあ」
夏雄は西瓜に口を近付けた。そしてその赤い身を口に入れるのであった。
第七十六話 完
2005・12・22
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