74部分:第七十三話
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第七十三話
第七十三話 五人の戦い
五人は睨み合う。しかし互いに隙は見出せなかった。ただ睨み合うだけであった。
「参ったわね」
華奈子は心の中でこう呟いた。
「皆思ったよりやるわ。これじゃあ」
手が出せなかった。これは彼女だけでなく他の四人もであった。迂闊に手を出せばこちらがやられる、それがわかっているからこそ手出しができなかった。五人は睨み合いを続けた。
しかしそのままでは何もならないこともわかっていた。何とかしなければならない。だがどうすればいいのか。それがわからないまま睨み合うしかなかった。
ここで華奈子は賭けに出た。無鉄砲な彼女らしいと言えばそれまでだが動いた。待っていられなくなったのだ。
「こうなったら」
彼女はその右手を煌かせた。
「美樹ちゃん、頂いたわ!」
「しまった!」
美樹はこの時一瞬だが赤音だけを見ていた。彼女の隙を窺っていたのだ。しかしそれで華奈子に対して隙を作ってしまった。華奈子はそれに乗ったのであった。
「もらったわ!」
「くっ!」
この時美樹の手も咄嗟に動いていた。攻められる直前に攻めていた。だがそれは華奈子に対してではない。赤音に対してであった。
「今なら」
この時春奈も動いていた。右隣にいた華奈子のガードが空いたのを見逃さなかったのだ。ゆっくりとだがその小さな手を走らせる。
だがここで春奈もまた華奈子と同じミスを犯してしまっていた。ガードを忘れたのだ。そこに梨花の腕が走る。そして梨花もまた同じであった。ガードが甘くなってしまったのだ。
「しめたわ」
赤音がその手をあげた。そのまま梨花の頭を狙う。何と五人はほぼ同時に同じ動作をしていたのだ。その結果は驚くべきものとなった。
「こんなことが」
一瞬であった。その一瞬が終わった時五人はそれぞれの顔を見合わせ呆然としていた。
五人の手にはそれぞれ鉢巻があった。そして頭にはそれがなかった。彼女達は皆一人の鉢巻を取ると同時に自分の鉢巻を取られてしまっていたのだ。これでは話にもならなかった。
「負けね、皆」
「そうね」
皆梨花の言葉に応える。
「これも引き分けってところかしら」
「まさかこんなことになるなんてね」
そう言い合って苦笑いを浮かべる。
「馬鹿みたい」
「けれど。何か納得できるわね」
「悔しい気持ちもあるけれどね」
「そうね。けれどまあこれでいいわ」
腑に落ちないところもあるが納得した。そして競技を終えた。結局ここでも引き分けであった。五人はそれぞれの勝負はともかく五人それぞれの勝負では結局その優劣がつかなかったのであった。
これで全ての競技が終わった。後は最終結果だけであった。果たして勝つのはどのクラスなのか。
「うちよ」
「うちに
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