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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十三話 華やかさの陰で……
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驚いたな」
最初はあっけにとられて見ていた皆が、口々に嘆声を上げる。

長身のロイエンタール提督が小柄で華奢なエーリッヒを軽やかにリードする。二人とも楽しそうに踊っている。何処からか笑い声が聞こえそうなダンスだ。エーリッヒのマントがダンスに合わせて軽やかにひるがえる。

ブラウンシュバイク公たちは苦い表情で見ている。しかし、令嬢たちは踊っている二人に目を奪われている。確かに眼を奪われるカップルだ。黒一色の軍服が華麗に舞う。


踊り終わった二人がこちらに戻ってくる。皆で拍手で迎えた。ロイエンタール提督は何処か苦笑気味に、エーリッヒは心底楽しそうな笑顔を見せている。先程までの嫌な雰囲気は何処にも無い。さすがだ、エーリッヒ。

「閣下、次は小官と一曲……」
「いや、先ずは小官と……」

口々にエーリッヒにダンスを申し込む僚友達を押しのけ、手を差し伸べたのはアイゼナッハ提督だった。唖然とする皆をよそにアイゼナッハ提督はじっとエーリッヒを見詰める。

一瞬、眼を見張ったエーリッヒはクスクスと笑い声を上げ始めた。そして
「喜んで」
と言うとアイゼナッハ提督の手に自分の手を重ねホールのほうに向かって歩き始めた。

「まさか、アイゼナッハ提督に先を越されるとは」
「口を出すより手を出せ、そういうことだな」
「なるほど、手を出せか。そう言えば、既婚者だったな、彼は」

そんな声が上がる中、エーリッヒとアイゼナッハ提督が踊り始める。黒の軍服が華麗に舞い始めた。


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