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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十三話 華やかさの陰で……
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を見ていた司令長官が呟くように問いかけた。
「アントン、フロイラインは何処まで知っているのかな?」
「……何もご存じない。本当は卿と踊りたがっていたのだが、公がそれを許さなかった。それで代わりにローエングラム伯と踊りたいと……」
その言葉に皆顔を見合わせそれぞれに溜め息を吐いた。
「……哀れだな。やはり卿は酷い男だ」
「……何とでも言え」
重苦しい沈黙が場を支配する。なんともやりきれない話だ。
「アントン、一つだけ忠告しておく。ローエングラム伯もオーベルシュタインもフロイラインを皇族としてしか見ないだろう。卿の狙いが成功しても辛い思いをすることになるぞ」
「……」
「それに彼らは覇権を分かち合うような人間じゃない。それだけは覚えておいてくれ」
司令長官は踊っている二人を見ながら呟く。そろそろ二人は踊り終わるだろう。フェルナー准将が顔を背けながら呟くように吐いた。
「分かっている。俺は本当は卿とフロイラインを結び付けたかった。卿ならフロイラインを大切に扱ってくれるだろうからな。世の中上手く行かんよ」
また沈黙が落ちた。フェルナー准将の言葉は嘘ではないだろう。フレーゲル男爵の事でもそれは分かる。司令長官は情の厚い人だ。ブラウンシュバイク公も同じことを思っているに違いない。それでも上機嫌でローエングラム伯と自分の娘が踊る姿を見ている。
やりきれないような沈黙を破ったのは司令長官の声だった。
「そうでもないよ、この場は卿の勝ちだ。明日にはブラウンシュバイク公がフロイラインの婚約者にローエングラム伯を選んだと噂が広まっているだろう」
「……」
「私もロイエンタール提督もこのあたりで失礼させていただくよ。ロイエンタール提督、付き合ってもらえますか?」
そう言うと司令長官は俺の手を取ってフロアーの中央に進み始めた。
帝国暦 487年10月 4日 オーディン ブラウンシュバイク公爵邸 ナイトハルト・ミュラー
ローエングラム伯とフロイライン・ブラウンシュバイクが踊っている。その様をブラウンシュバイク公を中心に取り巻きの貴族や、若い貴族の令嬢が嘆声を上げながら見ている。
俺たちは皆、顔を見合わせながらも不機嫌そうに黙り込んでいる。そんな我々をチラチラと貴族たちが見ているがその表情には嘲笑が漂っている。踊り終えたローエングラム伯とフロイライン・ブラウンシュバイクをブラウンシュバイク公達が大袈裟に褒めそやしながら迎える。あまり面白い光景ではない。
そんな中、エーリッヒとロイエンタール提督がフロアーの中央に進んできた。ロイエンタール提督はエーリッヒの手を取っている。どういうつもりかと思っていると、二人は向かい合い、軽やかに踊り始めた。
「ほう、これは、なかなか」
「うむ、
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