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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 24
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政面で自らの首を絞めるのは必定ですからね。そして、貴族達の注意が盗品と怪盗の動きに向いている頃。一般民に戻った貴女といえば、産業用の道具をできるだけ多くの店で時間をずらしながら少しずつ仕入れていた為に買い物客としての不自然さはあまり無く、生産関係者の買い付けだと思えばマーマレードの匂いも店員達の記憶に目立った形では残らなかった。このように、シャムロックが盗んで国外へ流し、イオーネさん達が証拠を消す。ある意味共犯だったのですよ。貴女方は」
 「そん、な……そんなッ!!」
 限界まで見開いた目がアーレストと、再び楽しそうにマーシャルと剣を交え出したイオーネの顔を往復する。
 『自覚は無いでしょうけど、お前にはいつもお世話になってるのよ。私達』
 出会い頭の意味不明な言葉。
 あれは、盗品の横流しを指していたのか。
 (違う! 奴らに流してたんじゃない! 盗品を商人達に売ってたのは、国内で処理して万が一アルスエルナ人の手に収まってしまったら、その人が真っ先に疑われると思って……地方領主の権限が及ばない、一番近い外国がバーデルで……だから……っ!)
 『勤労の報奨として頂いた品だけれど、田舎者の自分にはこんな高級品、とてもじゃないが畏れ多くて使えない。されど国内で手放して彼の方の縁者に見咎められるのも申し訳なく、恐ろしい』
 困った声音でか細くたどたどしく呟けば、大体の商人はにこやかに買い取りを申し出てくれる。
 無論、小娘如きには判るまいと侮られ、付けられる値は本当の価値の半分程度。
 だが、元は貴族が集めていた品物ばかり。半値でも、領民への還元には充分な額だった。
 偽りの商談が成立した時に浮かべた表情は「これでほんの少しでもみんなを助けられる」と、安堵が籠った本物の笑顔で。
 だからこそ、アンタ達も大変なんだなと頭を撫でられてしまうのは本当に困ったし、何度心の中でごめんなさいと頭を下げたか、数え切れない。
 悪い人は一人もいなかった。悪いのはいつだってシャムロックだった。
 なのに……みんな、殺されていた。殺されていたから、シャムロックは今日まで捕まらなかった。
 (……貴族階級の屋敷を飾るに相応しいと判断された品物を持ち出す商人が増えれば、不穏な連中が周辺に集まるのは当たり前。私の行為が奴らを誘き寄せてたんだ。でも、こんな事って……!)
 「イオーネさん達も、盗品に移った僅かな匂いでネアウィック村に行き着いたそうです。そして、私が預かった教会でマーマレードの香りを放つ貴女を見付けた。当初は人身売買を考えたそうですが……貴女を尾行していく内にアルフィンさんを見付け、村の内情を知り、イオーネさんの半生に深く関わった人物達と彼らの目的を目にして、気が変わったと言っていました」
 「目的……?」
 「貴女にシャムロックを辞めさせる
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