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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 24
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三人以外には呼吸音一つ捉えられない。
 一方、マーシャルは人数まできっちり把握しているらしい。
 アルフィンが連れて行かれる場面を見ていたのだろうか。
 十八人の、誰にも見付からずに接近して?
 只者じゃないのはアーレストへの攻撃で充分見て取れたが……マーシャルも、彼女と互角に渡り合っているイオーネも、マーシャルの攻撃を軽々避け続けたアーレストも、格が違いすぎる。シャムロックを鼻で笑い飛ばせる「本物」だ。この分だとマーシャルが度々口にする「アムネリダ達」と「ヴェラーナ」も、彼女達並みの実力者なのだろう。
 (私の周りにそんな名前の人は居ない。けど、私をヴェッラティーナ? マーシャルさん自身をウィリアー? って異国の言葉で呼んでるから、多分「ヴェラーナ」も「アムネリダ」も個人名じゃなくて、立場か何かを示してるんだわ。喧嘩別れした「ヴェラーナ」はアーレスト神父が相談に乗ってたネアウィック村の女性で、マーシャルさんと「ヴェラーナ」と「アムネリダ達」を合わせた全員が「あいつら」? ……っていうか……海賊共に加えて、イオーネとやらもマーシャルさんも、当然、私の身近に居るらしい他の「あいつら」も、知ってるって話よね……)
 「何処まで広まってるのよ、シャムロックの正体!」
 シャムロックの時は毎回男装して、頭にバンダナを巻いて、手袋も着けて、顔の下半分は常にスカーフで覆い隠していた。身長の低さは厚底の靴を履いてもどうしようもなかったが、それでも隠し切れてると思ってたのに……よもや村の住民にまでバレているとは。
 投げた網を回収したら穴だらけだった、くらいの衝撃と虚しさに襲われた気分だ。
 「ご心配なく。まだ、ごく一部の方々しか知りませんよ。ですが、怪盗を続けていれば時間の問題でした。貴女の体には立派な印が付いていますからね」
 「印?」
 ミートリッテは、遠目にも近目にもこれといって変わった身体的特徴など持ち合わせていない。何処をどう見ても普通の一般民だ。
 両手のひらを見比べて首を傾げると、アーレストがいかにも「可愛いものを見た」と言いたげな笑いを溢した。
 「マーマレード」
 「へ?」
 「貴女の体には微かな潮の香りと、マーマレードの甘い香りが染み付いているんです。余程の愛好家か、それこそ生産者でもない限り、これほど強くは匂わないでしょう」
 「……あ!」
 匂い。マーマレードの香り。
 食べる機会は滅多に無いが、ジャム作りの手伝いは果樹園で仕事を貰った三年前から続けている。
 試しに腕を鼻へ近付けてみれば、勘違いかとも思える程度にうーっすらと甘い匂いがした。
 (なんてこと……いつの間にか馴染んでたから、自分じゃそんなに強く感じないんだわ)
 自分自身の体臭など、度を超した酷さでもなければ感じ難いものだ。
 身だしなみに
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