第45話 脅迫
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先らしき物で道を指し示した。
「な、何?」
佐天は走り寄るが黒い塊は、湯気のように立ち消えた。
サソリヲタスケテ
タスケラレルノハ
アナタダケ
耳鳴りのようにエコーが掛かった音が風のように佐天を一瞬だけ包み、夏の暑さに消えて行った。
「サソリ?」
買い物袋を肩に掛けながら、佐天は空耳かもしれない声を聴き、上空へと視線を巡らす。
佐天の指先から冷気が迸る。北風のようにひんやりとした冷気が何かに導かれるようにボンヤリと結晶を街灯で煌めかせながら、続いている。
何かの意思が宿ったかのような冷気を指先を伸ばしながら感じて、佐天は静かに走り始めた。
理屈よりも行動の佐天の果敢な性格は、指し示す冷気云々よりも胸騒ぎを覚えてしまった。
自然と走る速度は、上がりだしてコンクリートに氷を張るとスケートの要領で滑りだしていく。
胸騒ぎの正体は分からない
サソリの事を考えると鼓動が早まっていく
サソリ......サソリ
まさか、いや......そんなことは
考えたくもなければ、予想したくもない現実。
無残に闘いに敗れて、傷だらけの身体で地に伏せるサソリのビジョンが浮かぶ。
何か、サソリを上回る強烈な闇の力が出現していくように感じた。
******
とあるビルの屋上でサソリと木山は、待っていた。
「サソリ......君。やはり誰か居たのか?」
木山が先ほどから柵に寄りかかって両眼を瞑っているサソリに問いかけた。
「ああ......」
それ以上は説明せずに、サソリは何か別の事に集中するように黙ったまま、腕を首の後ろに回した。
木山はその様子を恐れのような視点で眺めていた。
先ほどサソリと繋いだ『幻想御手(レベルアッパー)』には能力付与の副作用の他に一部の記憶が流入する作用があった。
木山は、サソリの知られざる記憶の一部を垣間見て、恐怖した。
人間を切り裂き、内臓を燻らせる禍々しき所業の数々。
血抜きをした人間の顎下からメスで喉を切り、真っ直ぐステーキでも切るかのように上下に揺り動かす。
肉が断たれ、肋骨を折っていく。
血の匂い、気化した脂肪分がベタッと肌に張り付いて汗と馴染んでいく。
そして内臓をごっそりと取り出すと慣れた手付きで水場へと重量を失った死体を水洗いをしていき、赤々とした波紋が排水口から渦を巻いて落ちていった。
なんとも楽しそうな気持ちだったが、木山は早く離れたくて堪らない。
それでも関係なく、映像は続く。
組み木のように精巧に組み立てられた死体に刃物や針を仕込んでいく。時折、指先を動かして仕込みが作動するか確認している。
それはまるで人形を使い、人間に復讐しているように見えた。
目の前にいる無邪気に眼を瞑っているサソリという存在を震えながら
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