二話:宿題
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暖かい目を向ける。
そこでモードレッドの頬によく見ると引っ掻き傷があることに気付く。
『怪我してるよ、モードレッド』
「ん? ああ、猫にやられたやつだ。まあ、こんなもん唾でもつけとけば治るだろ」
昼休みに木から降りられなくなった猫を助けた時につけられた傷だ。
恩知らずな猫もいたものだと思い出してムッとしながらもぐだ男が気にしないように振る舞う。
だが、この学校で怪我というワードを出して無事でいられる者はいない。
「怪我人ですか? 直ちに処置します」
扉を開け放つ音が教室に響き渡る。
ちょうど扉を背にしていたモードレッドは顔を引きつらせブリキ人形のように振り返る。
「か、母ちゃん……」
「モードレッド、学校では先生と呼びなさいと言ったはずです」
モードレッドが母と呼んだ女性はナイチンゲール。
保健室の先生として学校中の人間から恐れ、尊敬されている。
美しく、仕事も真面目な彼女がなぜ恐れられているのか、それは。
「怪我をしたらすぐに保健室に来なさいと何度言えば分かるのですか?」
「うわあああ、母ちゃんごめんよー!」
「謝罪は後です。すぐに消毒・殺菌を行わないと……」
「もうオキシドールのバケツで、顔面ザブザブはいやだぁぁぁ!!」
ずるずると奈落底へ引きずり込まれていくかのようにモードレッドは引きずられていく。
溺れる者のように藁をも掴もうと手を伸ばすがその手には何も掴めない。
ただ、静寂だけが教室を支配するのだった。
『美しい家族愛だったね……』
「とてもそうには見えませんが…あれも一種の愛情表現なのでしょうか」
『きっとそうだよ、そう思うしかないよ、天草』
少し困り顔でぐだ男の言葉に反応したのは天草四郎。
同じクラスで生徒会の副会長を務める真摯な友人だ。
時折100%善意でとんでもないことを起こしそうになるが本人に悪意はない。
『そうだ、天草これから暇? 今から宿題をやりに図書室に行くんだけど一緒にどう?』
「お誘いは嬉しいのですが、生徒会で今日中に片付けないとならない仕事があるので」
『そっか、ごめんね』
どうにも今日は他の人との都合が合わない日らしい。
ただ、ぐだ男は偶には一人で静かにやるのもいいだろうとすぐに切り替える。
「いえ、また機会があれば誘ってください」
『ありがとう。それじゃあ、そっちも頑張ってね』
天草と別れ図書室に向かう。
部活が休みになったせいかいつもよりも校舎が静かに感じられる。
そのせいか不思議とやる気が湧き出てくる。
この調子で手早く終わらせてしまおう。
そう、ぐだ男は意気込みながら図書室のドアを開けた。
「お姉様、この本を読みましょう。き
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