66部分:第六十五話
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第六十五話
第六十五話 仮装競争
それは赤音であった。彼女は不敵な笑みを浮かべながら華奈子の前に立っていたのであった。
「仮装競争には私が出るの」
赤音は得意気にこう言ってきた。
「赤音ちゃんが?」
だがどういうわけか華奈子の声は拍子抜けしたものであった。
「あれ、驚かないの?」
「だって」
華奈子はその訳を述べた。
「赤音ちゃんどん臭いんだもん。そんなので大丈夫なの?」
「任せなさい」
しかし彼女は根拠のない自信をここで見せてきた。
「今回は負けないんだから」
「そうなの」
「華奈子ちゃんこそ覚悟してなさいよ。今度こそ負けるんだから」
「うん」
だが華奈子は自分のことより赤音の方が心配であった。彼女がこけはしないかと思っていたのだ。そうこう考えているうちにレースがはじまった。
華奈子は十二単であった。シンデレラのような格好を予想していただけにこれは意外であった。
「えっ、何かかぐや姫みたい」
「みたいじゃなくてそのものよ」
クラスメイトはしれっとしてそう答えた。
「お姫様だから。じゃあ何だと思ってたの?」
「何と言われても」
こう言われるとかえって返答に苦しむ。
「これじゃあ。動きにくくない?幾ら何でも」
「仮装競争ってそういうもんじゃないの?」
「そういうものなの?」
「だって。普通に走れたって面白くないじゃない」
「それはそうだけど」
「まあ頑張ってよ。期待してるから」
そう無責任な発言で終わらせた。そんなこんなで位置についた。
見れば赤音もお姫様の格好であった。だがそちらはシンデレラの様な格好であった。
「やっぱり負けるかな、こりゃ」
流石にそう思わざるを得なかった。だが勝負とあらば全力を尽くす、華奈子は意を決して構えた。
銃が鳴った。それを受けてスタートを切る。走るとなれば一目散だ。
赤音も順調に走っていた。今回は転びそうにもない。
「いけるかな、これは」
赤音自身もそう思った。流石に十二単とドレスでは差がある。実は面と向かって勝利宣言をしてもかなり不安であったのだ。正直華奈子に勝てるとは思っていなかった。
「私が華奈子ちゃんに勝ったはじめての人なのかなあ」
考えが飛躍してこうも思いはじめていた。学校で今まで華奈子にスポーツで勝てた者はいなかった。華奈子の運動神経はそこまで凄いものだった。
「勝ったら自慢しよっと」
無邪気な考えであった。しかしそれはすぐに打ち砕かれてしまった。
「えっ・・・・・・」
目の前を驚くべき速さで十二単の華奈子が走り去ってしまったのだ。そしてテープを切った。
「嘘・・・・・・」
やはり華奈子は華奈子であった。何を着ていてもその足を止めることはできなかっ
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