暁 〜小説投稿サイト〜
剣士さんとドラクエ[
101話 火柱
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 ゼシカはちっとも私に攻撃が当たらないのをイライラした顔で見る。おっかないよ、顔色が悪いのに憤怒の表情なんだから。彼女に対して、私は多分……泣き笑いみたいな顔だろうね。私の掌底も見切り始めたゼシカの軽い身のこなしがなかなか当てさせてくれなくなっていく。

 本当は攻撃したくないのに、これじゃあ、ククールが治してくれるとふんで、骨の一本や二本や三本や四本……下手したら全身の複雑骨折で止めるって事になるかもしれない……当たらないから、力を上げる。そもそも阻まれているからかなり力を込めてるのに……私みたいな体力馬鹿じゃないんだから、魔法特化の女の子に向けるもんでもないよ……試合でもね。

 かなり早い発動のメラゾーマが私を焼こうとし、それを避ければ降り注ぐのはマヒャド。マヒャドって……ゼシカは使えなかったのに……この「ゼシカ」は本人の資質でも引き出すんだろうか?そんな無茶なやり方で?ゼシカの体に間違いなく負担がかかってる……。

 でも、相手を殺す気で戦っている者と動きを封じよう、気絶させようと戦う者はやっぱり差が大きい。ゼシカが狙いすましたメラゾーマは、避けた私の着地点を狙っていて……嗚呼、世界が真っ赤。ごうごうと音を立てて燃える炎の中に入るなんて感覚、今までちっとも分からなかった。彼女に焼かれた幾多の魔物たちもこんな気分だったのかな……。あまりのことにどうしてかちっとも熱くない。……あれ?

 ……紫色のあの結界が、私を包み込むように展開し、メラゾーマはまったくもって無意味とばかりに弾かれている。街に似つかわしくない巨大な焼け跡が地面に刻まれ、さっきから二人分のベホマが飛んできてるけど、それも無意味で。

 なんだか私は客観的に物語でも見ている気持ちで、思わず拳を下ろしてしまう。すぐに思い出して切り込んだけど。手刀で。びっくりしたのか、予想外だったのか無事、ゼシカの意識を刈り取ることには成功したけど……。

「……」

 なんともなかった私に周りもびっくりだよね。私もびっくりさ。ほんと。なにこれ。なんで?ドルマゲスの魔法が効かなかったのと一緒なの?ともあれゼシカの肌におもいっきり叩き込んだのは間違いないから、安静にしないと……まだ正気じゃないかもしれないから警戒しつつ。神父様にシャナクを唱えてもらうのも良いかもしれない。ああそうだ、あの不思議な泉に行ってあの綺麗な水を飲ませたら悪い何かなんて吹っ飛ぶよね。

 ……で、気のせいかな。明らかにゼシカじゃない何かが……さっきまでいくら「正気じゃなく」てもゼシカに違いはなかった……ゼシカの体を動かし、杖を手に起き上がっているのは。あれ、ゼシカじゃないよね……体はゼシカのだけど……。

『……その命、差し出せッ』

 声も明らかにゼシカじゃないし!誰だよこの気味の悪い高い声は!全
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