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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百三十二話 バラ園
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」
元帥の言葉に私とリヒテンラーデ侯は顔を見合わせた。
「……彼を味方に引き込むことは出来ませんか」
戸惑いながら問いかけた私の言葉に元帥は首を横に振った。
「彼は私と戦いたがっています。謀略家として私と戦い、その力を試したがっている……。私もいつかこんな日がくると思っていました。そして来た……」
「しかし、親友なのでしょう、このままでは……」
私の言葉に元帥は僅かに苦笑して言葉を続けた。
「アントンは私が死ねば悲しむでしょう。私のために泣いてくれると思います。ですが戦う事を止めようとはしない。負けを認めるまで戦い続けるでしょう」
「……」
「お二人ならお分かりでしょう。生きていく以上、お互い譲れないものが有ると。譲るのであれば、それなりの何かが要ると」
「……」
何も言えなくなった。私もリヒテンラーデ侯も貴族を切り捨てることに同意した。それは新銀河帝国、宇宙を統一する唯一の星間国家という夢と引換えだった。単なる権力争いで切り捨てたわけではない。
重苦しい雰囲気を打破ったのはリヒテンラーデ侯の声だった。
「ヴァレンシュタイン、陛下が卿に話したいことがあるそうじゃ。バラ園に行くが良い」
ヴァレンシュタイン元帥はリヒテンラーデ侯の言葉に頷くと席を立って歩き始めた。立つ時に濃紺のサッシュが目に付いた。彼の近くにいる人間だけがサッシュの色に気付くだろう。彼を忌み嫌い、遠ざかるものは気付かないに違いない。
「どうも、心配じゃの」
リヒテンラーデ侯の呟きに誰とは聞かなかった。聞くまでも無い。
「いささか、疲れているようですが」
リヒテンラーデ侯は溜息とともに言葉を出した。
「ローエングラム伯にも困ったものじゃ」
「?」
「小僧めが図に乗りおって。本来なら死罪になってもおかしくなかったのじゃ。陛下が甘やかすから付け上がりおって」
「……」
帝国暦 487年10月 2日 新無憂宮 バラ園 フリードリヒ四世
「陛下、リヒテンラーデ侯より御呼びと伺いましたが?」
「うむ、ご苦労じゃな、ヴァレンシュタイン」
声をかけ、目の前でひざまずく若者を見た。小柄で華奢な体を黒のマントが隠しておる。初対面でこの者が宇宙艦隊司令長官だと言っても誰も信じまいの。
「立つが良い。遠慮は要らぬ、そちもバラを見るが良い。もう直ぐ華も終わりじゃ。華が終われば剪定じゃの」
「はっ」
ヴァレンシュタインは立ち上がると予の後ろに立った。ヴァレンシュタイン、そちの良い所は遠慮の無い所じゃ。他のものでは妙に遠慮するでの、反って予が疲れるわい。
「ケスラーから聞いた。ローエングラム伯のことで苦労しておるようじゃの」
「はっ」
「どうかの。アンネローゼを後宮より下げるというのは」
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