63部分:第六十二話
[8]前話 [2]次話
第六十二話
第六十二話 運動会の前に
華奈子達の学校でも運動会がある。何処の学校でもあるものだが華奈子達の学校でも当然のようにある。
「また運動会がはじまるね」
「うん」
上機嫌な華奈子に対して春奈はあまり機嫌がよくなかった。力なく応える。
「何かあったの?」
「私体育苦手だから」
彼女は小さな声でこう言った。
「あまり嬉しくないのよね」
「そうだったの」
「華奈子ちゃんは嬉しいだろうけれど」
「あたしはね、そりゃ」
華奈子は運動神経がいいことで知られている。従ってこうした大会では幾つもの競技に出て欲しいと言われて引っ張りだこなのである。
「頑張りどころだから」
「いいよね、そういう場面があって」
「春奈ちゃんだってあるじゃない」
「私に?」
「うん」
華奈子はこう言って頷いた。
「お勉強とか。春奈ちゃん得意でしょ?」
「けどあれは」
「他にもあるじゃない。応援とか」
「応援」
「そうだよ。今度チアガールやるんだよね」
「うん、クラスのね」
この学校ではクラス対抗で運動会を行うのである。春奈はクラスの応援団のチアガールの一人となったのである。
「それじゃあそれ頑張ればいいと思うよ。人間頑張るところで頑張ればいいから」
「華奈子ちゃん」
春奈はそれを聞いてじんときた。華奈子のそうした言葉が嬉しかったのだ。
「そっちでも対抗ね」
「えっ!?」
「あたしもやるのよ」
華奈子はにこやかに笑ってこう言った。
「チアガール。美奈子もやるらしいよ」
「美奈子ちゃんも」
「赤音ちゃんや美樹ちゃん、梨花ちゃんもやるんだよ。運動会じゃ敵味方に分かれるね」
「そういえばそうね」
おっとりとした春奈もここで気付いた。クラス対抗ならば当然そうなるのだ。五人も美奈子もそれぞれ全く違うクラスに
いるんだから。
「いい、春奈ちゃん」
「負けないわ、って言うのよね」
「あっ、わかる?」
「わかるわよ」
くすりと笑って言った。
「だって華奈子ちゃんの口癖だもの」
「あっ」
「それじゃあこっちも応援負けないわよ」
「うん」
「お互い徹底的にやりましょうね」
「そうこなくっちゃ」
こうして二人は今度は敵と味方に分かれて競うことになった。運動会はもうすぐはじまろうとしていた。
第六十二話 完
2005・11・4
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ