§70 怠惰の魔王あとしまつ
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ちに負ける、という結果はどちらにしろ変わらなかっただろうがね」
「十全の状況?」
首をかしげる恵那にダヴィドは再度苦笑。今度の先ほどの苦笑とは僅かに違う意味を込めて。
「天性の勘を持つ巫女殿でも流石に察することは不可能だったか。……あぁ、失礼。軽んずるつもりはないのだ。気を悪くしたら許していただきたい。地脈を読むことにそれなりの自信がある私でも気づくのが遅れたから、そちらに疎い巫女殿では察することは厳しかろうというだけの話」
「いや別に恵那は気を悪くしたりなんかしないけどさ。地脈ってこと? 確かにこのマンション異界化してたり使い魔放ってたり罠仕掛けてあったり事前準備は入念にしてたけどさ。全部微妙なカンジじゃなかった?」
疑問を浮かべる恵那に対するダヴィドの反応は至極単純。微妙な視線を黎斗に向ける、それだけだ。それだけで、恵那も大体察したらしい。
「……あぁ」
いつものことか、とばかりの視線で黎斗を眺め、それをダヴィドが肯定する。
「突入前のワイヤー、アレがおそらく地脈を一時的に破壊したのだろう。……多分。きっと」
自信が無いのか語尾が尻すぼみになっていくダヴィド。地相術、という一点に置いてはエリカですら認めうる才能を持つ彼だから気づけたようなものだ。ただ、それは常人に聞かせたところで一笑に付される代物。考慮するに値しない狂人の妄想に等しい。理論上不可能ではないかもしれない、程度の可能性。
「……あら。バレた?」
二人の会話を聞きながら、血を踏まないように歩いていた黎斗が振り向いて目を丸くする。まさかこんなに早く気づかれるとは。
「……本当にそんなことが出来るとは今この時まで思っておりませんでした」
もしかしたら程度の可能性だったのですが、などと諦めた目をする彼に向って黎斗は言う。
「やー、地脈ちょこっと弄ってみた」
位置を微妙にズラすだけでも致命傷な術式の組み方だったから位置をズラした、ただそれだけだ。
「そんな簡単に出来るの?」
純粋な目で見てくる恵那にダヴィドは思わず苦笑する。
「無茶言ってくれるな巫女殿。私が二桁いても半日はかかるぞ」
「だいたいわかった」
変な目で見られる。心外だ。
「だいたい、何故弓引いた愚か者どもを抹殺しないで半死半生に? いえ、それを言ったら私など既にこの世にいないのですがね」
疲れたような顔で笑うダヴィドに、曖昧な笑みで黎斗は返す。
「殺るより捕虜にする癖が基本的についてるんだよね」
捕虜交換で金を稼いでいた遙かな昔の記憶が蘇る。死体から装備を剥いで、脱走した馬を捕獲して、捕まえた貴族を返す代わりに金を貰う。やったことだけ羅列していると魔王というよりチンケな悪党だ
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