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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第十七話 作戦開始日前日
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万感の思いがこもっている。自分もそうだが、こと大規模作戦の前は様々な思いが交錯して眠るどころではないのが普通だ。目の前の妹のように不安や緊張で押しつぶされそうになる者もいるだろう。だが、だからと言ってぎこちなくなったり、いつもの自分と違う動きになってしまっては、自分の力を十全に発揮できない。そのことが大きな怪我につながったり、最悪の場合自分の死に直結してしまう。一人で感情を律することが難しければ、助けてあげるのが仲間であり姉妹の役目である。
 紀伊の思いはそれだけではなかった。讃岐は明るい妹だ。時におっちょこちょいなところもあるけれど、伸びやかに育った妹に紀伊は自分にないポジティブなものを感じている。それが讃岐の魅力であり長所であり、そして自分が好きなところだと思っている。その讃岐がこうして暗い顔をしていることは似合わない。艦娘だから、時にはそうした感情にとらわれることがあるかもしれない。けれど、姉として妹に取りついた暗い黒い感情を振り払ってやり、いつもの明るい笑顔を見ていたい。

 そんな思いを抱きながら紀伊は讃岐を抱きしめ続けていた。

不意に讃岐は紀伊から体を離した。そしてにっこりとうなずいた。
「はい!姉様!」
そしてもう一度ぎゅっとしがみつくと、布団に転がり込むようにして掛け布団をひっかぶり、す〜す〜と寝息を立て始めた。
紀伊は一人かすかに微笑んでうなずくと、静かに布団の中に入った。



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