第十七話 作戦開始日前日
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をすくめたのは、飛龍だった。彼女と姉妹艦蒼龍(厳密に言えば違うのだが)は第二航空戦隊に所属している。彼女たちは兵器開発部航空部門の主任を務めてもいた。
「これで失敗は10度。あまりトライしすぎると、貴重な資源を無駄にするからね。まぁ、これまで烈風や彗星、流星に関しては各空母に必要なだけいきわたっていることだし、今回はよしとしようよ。」
蒼龍が資材を片付けながら言った。
「ですけれど・・・・敵も黙ってはいないでしょう。いずれ新型艦載機を搭載した敵が出現しないとも限りません。既にその兆候が出てきています。今のところ私たちが優勢ではありますが、新型艦載機を繰り出して来れば、制空権確保は難しくなりますし、場合によってはこちらが劣勢になる可能性もありますよ。」
大鳳が開発装置から鉄くずを排除しながら言った。同じ横須賀鎮守府に属する正規空母として、普段第二航空戦隊と大鳳は仲がいい。
「その通り。やれやれね。前世じゃ私たちって搭載してたの零戦だよ。九七艦攻だよ。九九艦爆だよ。それが今じゃ烈風でもダメだって言ってるんだから驚きだよね。多門丸がきいたらなんていうかな?」
「きっと目ん玉ひん剥いて怒るんじゃない?『貴様ら!彼我の戦力は何によって決せられるか!それは戦闘機の性能でも弾数でもない!各員の技量とたゆまぬ練度向上への努力なのだ!』ってね。」
3人は声を上げて笑った。
「ま、それはともかくとして、真面目な話、そろそろ新型機が欲しくなるところよね。大鳳、何か心当たりある?」
大鳳は装置から身をおこし、しゃんと背を伸ばして二人を見た。そしてややしばらく考え込んでいたが、一つうなずいて言った。
「なくはないですが、実現は難しいと思います。」
「言ってみて。」
「前世の大戦末期に開発途上にあった局地戦闘機、震電です。」
二航戦の二人は顔を見合わせた。
「ええ、お二人は知らなかったと思います。私も記憶があるだけですから。」
大鳳はそばにあった黒板に歩み寄ると、チョークで機体を描いて見せた。シャープな機体は今までに見たことのない、常識を覆すものだった。二人は息をのんで見入っている。
「震電は本来はB−29などの迎撃戦闘機として開発されたものです。高度8,000メートル以上で時速750キロ。武装は30ミリ機関砲を4門。今までの機体をさかさまにしたような前翼型の機体を特徴とします。」
これまでの飛行機と全く違う姿、その性能に二人は目を見張った。
「すごい!」
「時速750キロ、30ミリ機関砲って、烈風の比じゃないよね!」
ですが、と大鳳は言葉をつづけた。
「一部ではこれをさらに噴進エンジンによるさらなる諸元性能向上の話もあったようですが、元々のプロトタイプである一号機すら試験飛行途上で終了したようです。したがってデータもほとんど残存していません。
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