第十七話 作戦開始日前日
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残っている。自分は前世の凄惨な戦いを覚えており、その記憶に今も囚われているのだと。だが、赤城と加賀がいつも一緒にいるのは前世のつながりというだけではない。束の間の時間だったが、紀伊は二人の様子を見てきて、はっきりとそういうことができると思った。当の本人を目の前にしても。
「赤城さん。」
紀伊は穏やかな口調で話しかけた。
「赤城さんと加賀さんは、私とは比べ物にならない時間を一緒に過ごしてきたのではないですか?」
「ええ・・・・・演習の時も、夜寝る時も、食事の時も、楽しい時もつらい時もずっとずっと一緒でした。」
「もし考え方が違っていたり、波長が合わないのであればそんなにも一緒の時間を過ごすことなんてありえるでしょうか?」
「でも、それは前世で私たちが一緒に行動していたからだと思います。それに一航戦の双璧という理想像に二人とも適合しようとしていたのかもしれません。」
「なら、赤城さんは加賀さんが嫌いなのですか?」
赤城の眼が驚いたように見開かれ、次の瞬間すっと言葉が喉から出てきていた。
「いいえ。大好きです。加賀さんとはいつも一緒に寄り添っていたい。私にとってとても大切な存在です。」
赤城の言葉を聞いた紀伊はにっこりした。
「ね。そうなんです。大好きだからこそ一緒にいるんです。決して考え方が同じだからとか、そういう理由からじゃありません。それに・・・・。」
紀伊はそっと赤城の手に自分の手を重ねた。
「忘れていませんか?私たちは艦娘です。決して前世の戦艦や空母そのものじゃありません。艦娘は艦娘です。前世の自分に誇りを持つことはとても素晴らしい事です。私はこれまで多くの皆さんと出会ってきました。どの方も――赤城さんを含めてです――前世の自分自身にとても誇りを持っていました。私には前世はありません・・・・・。」
自分は生体兵器なのだから、という言葉を紀伊は喉の奥で押し殺した。
「とてもうらやましいです。でも、前世に縛られるだけの存在なんて、つまらないし悲しい事と思いませんか?」
「紀伊さん・・・・。」
「赤城さんは私の憧れの先輩です。でもそれはあなたの前世にではなくて、今の赤城さんに対してです。毅然とした態度、それでいて皆に優しい赤城さん。それは飾り立てていない赤城さん本来の姿だと私は思います。加賀さんもそんな赤城さんが大好きだから、赤城さんが想っているのと同じくらい大好きだから一緒にいるんです。大丈夫、加賀さんもきっとわかってくれます。」
一瞬赤城ののどが鳴った。彼女は急いで目を背けると、ぎゅっと目をきつくつぶった。
「ごめんなさい・・・・。」
絞り出すような声で赤城は謝ったが、次の瞬間にはもう笑顔を紀伊に向けていた。
「紀伊さん、本当にありがとうございます。私、紀伊さんと一緒にいることができてとてもうれしいです。」
「あ
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