第五章
[8]前話
三人はマジック難波店でだ、この日も手伝いに来ていた牧村に会うなり言われたのだった。
「わかったみたいだな」
「いや、何も言ってないですけれど」
「何でそう言えるんですか」
「今日会っていきなり」
「顔に書いてある」
それでわかったというのだ。
「陰口、もっと言えば人の悪口は言うものじゃないな」
「まさか本当に出て来るなんて」
苺がその時のことを思い出してだ、牧村に憮然とした顔で答えた。
「思いませんでした」
「何か今も信じられません」
莉世も苺と同じ表情で言う。
「大阪で出て来るなんて」
「ほんま殺されるかって思いました」
最後に薫が言った。
「追いかけられて本屋に出て」
「人の陰口、悪口は言うなって戒めですか?」
苺はまた牧村に言った、今度は問いだった。
「つまりは」
「そういうことだな、しかしだ」
「しかし?」
「悪口は言っていいものじゃない」
陰口も含めてだ、牧村は苺達に話した。
「そもそもな」
「言って聞いて心が荒むからですか」
「それよりまだお世辞でもいいことを言った方がいい」
「そういうものですか」
「そうだ、悪いことを思えばだ」
その分というのだ。
「いいことを言葉に出すことだ」
「それが一番ええんですね」
「そうだ、悪口は心を荒ませるしだ」
牧村はここでこのこともだ、苺達に言ったのだった。
「また牛女が出て来るぞ」
「わかりました」
「もうあんな目に遭うのは沢山ですし」
「うち等もう絶対陰口、悪口は言いません」
「それがいい。笑う門には福来たるでだ」
そしてと言うのだった。
「陰口、悪口に禍か妖怪が来る」
「ほんまその通りでした」
三人は牧村の言葉に頷いた、そして以後陰口も悪口も言うことはなくなった。いつも笑顔でいる様になり牧村の言った分それだけ幸せになれた。
牛女 完
2016・7・29
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