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九尾猫
第四章
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「この夏、毎日頼むわ」
「お礼もさせてもらうわ」
「お礼は煮干でいいぞ」
「わしはキャットフードや」
 二匹共そちらも忘れていない。
「一袋でな」
「鮪の一つや」
「ほなそれでな」
「使わせてもらうわ、この硯」
 二人も応えてだ、そしてだった。
 猫達の力を借りてだ、硯の中で毎日水泳の練習をした。塩水の中で泳げる様になり真水でも普通に泳げる様に。お盆を過ぎた頃にはだ。
 二人は泳げる様になった、それで富美男と最初に喋った公園で二匹にそれぞれお礼の煮干とキャットフードを渡した。
 そのうえでだ、笑顔で言うのだった。
「いや、有り難う」
「お陰で泳げる様になったわ」
「今年の夏こそはって思うてたけど」
「実際にそうなれたわ」
「ほんまにな」
「これはよかったわ」
「最初はや」
 九尾猫は煮干の袋、紅愛と美海がくれたそれを前にして言った。
「海で泳いでな」
「慣れたらプール」
「そうしてけばええねんや」
「そや」
 まさにというのだ。
「自分等最初からプールで泳ごと思ってたやろ」
「学校プールやしな」
「近所のスイミングスクールもあって」
「真水やと浮きにくい」
 身体がというのだ。
「そやからカナヅチやとや」
「最初は海で泳いだ方がええ」
「そやねんな」
「そういうこっちゃ、何はともあれ自分等はもうカナヅチやないで」
 もうというのだ。
「胸張って泳ぐんやで」
「そうするわ」
「これからはな」
 二人も答える、だが。 
 紅愛はここでしみじみとしてだ、こんなことを言ったのだった。
「ここでうちが富美男に喋りかけんとな」
「ああ、こうなってへんな」 
 美海も応える。
「絶対な」
「そやろ、それがな」
「紅愛ちゃんが富美男に喋りかけて」
「結果として泳げる様になった」
「思わん展開やな」
「そやろ」
「世の中何があるかわからんわ」
 その富美男の言葉だ。
「猫かて長生きして猫又になったりするんや」
「実際にな」
「そうなるねんな」
「そや、そして人の家に飼い猫として住んでるんや」
 ごく普通にというのだ。
「そうしたこともあるんや」
「そんで中には長老さんみたいに千年生きてる猫もおる」
「そういうこっちゃな」
「そや」
 九尾猫、この辺りの猫達の長老である彼も言う。
「そやから猫に話しかけたらや」
「こうしたこともあるんやな」
「そやねんな」
「それで泳げる様になる」
「世の中そういうこともあるんやな」
「何でもあるのが世の中や」
 長老は千年生きたその人生いや猫生から話した。
「自分達も覚えておくんや」
「ああ、よおな」
「そうさせてもらうわ」
「ほな泳げる様になったから」
 それでともだ、九尾猫は二人にあらためて言っ
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